レーザで美しくなる

ゲイル・オーバートン

レーザを応用した皺とりと脱毛、眼と顔の美容整形、脂肪吸引などは美容フォトニクスの一部でしかない。審美医療ビジネスとしての美容フォトニクスは2016年に約30億ドルの事業規模になると予測されている。

レーザ光を利用したさまざまな製品は、低レベル光線療法( LLLT )による内部治療機能ばかりでなく、人々の外見の向上に役立っている。美容フォトニクス、つまり、そのごく一部を例示すると、皺とりと脱毛、眼のレーザ支援角膜曲率形成手術(LASIK)、レーザ脂肪吸引などに使われる光源と光線伝送用のシステムは、2009年に18 億ドルの市場規模に到達した。その後は7%の複合年間成長率で増加し、2016年には30億ドルに達すると予測されている(1)、(2)。
 美容光線療法のための研究開発は順調に拡大する分野となり、その期待される顧客基盤(および関連する資本投資)は巨大になっている。2011年8月末、米ミシガン大学の研究者たちは1708nmの通信用レーザを使用し、座瘡発赤と関係のある油脂由来皮脂腺をターゲットにして、にきびを治療した。レーザは脂肪を周囲への影響なしに溶かし、1.5mmの深さにまで浸透した。その結果、プロアクティヴ(Proactiv)は、薬品ではなく光を使用してにきびを治療する事業展開が可能になった。
 しかし、美容フォトニクスは学問的な運用だけではない。商業的に利用できる光に基づく美容技術は、今や主流の媒体広告とインフォマーシャルの一部となり、従来の美容製品の販売に対して挑戦し始めている。あなたがまだ見ていないとしたら、あなたにもアメリカンレーザスキンケア(American Laser Skincare)のレーザ脱毛についての電子メールがやがて届くだろう。

皮膚の治療

皮膚の皺、むだ毛、染みの3 つが外見を気にする人たちの大敵であることは間違いない。幸いなことに、現在はこれらの敵へのレーザによる対抗手段とそのための皮膚の「調整」がほとんどの美容施術院で利用可能となり、市場には家庭で使用する携帯用の製品も登場している。これらの製品は従来の外用クリームや剥離剤、脱毛剤などに比べると初期投資が大きいが、報告された事例研究によると、光線を用いる処置は確かに効き目があり、従来の処置よりも数ヶ月から数年と長期の効果が得られる。
 2009 年の終り頃、イスラエルのシネロンメディカル(Syneron Medical)と米キャンデラ(Candela Corp.)は合弁で世界最大の美容医療機器会社の1つを設立した。このシネロン/キャンデラは2011年に世界市場の41%のシェアと2億800万ドルの売上高を目指している。同社の製品はレーザ、レーザダイオード、LED光源およびフォトニックでないラジオ周波数(RF)と超音波技術を使用して、脱毛、皺(およびにきび)取り、皮膚の若返り(および美白と拘縮)、セルライトの低減、歯のホワイトニング(これだけで55億ドルの世界市場が推定される)、血管病変と色素沈着の除去、刺青の除去などを行う。
 2009年の米国レーザ医学・手術学会(American Society for Laser Medicine and Surgery, ASLMS)の集会において、シネロン/キャンデラの美容用の光学製品は14件以上の発表が行われた。その1つの論文ではAlex TinVantageレーザによる皮膚の病変と刺青の効果的な除去が報告された(図1)(3)。Qスイッチルビー、Nd:YAGおよびアレキサンドライトレーザのそれぞれは、何十年にもわたり刺青の除去が研究されてきた。Alex TinVantageレーザはナノ秒領域の532、755 および1064nm の波長のパルス光を用いて、真皮の線維芽細胞束(皮膚の結合組織)に埋め込まれた多色刺青インク色素顆粒をターゲットとする。一般に、532nm光は赤色インク、755nm光は緑色インクを除去し、短波長ほどにはメラニン色素に吸収されない1064nm の長波長近赤外光は黒色インクを除去し、いずれも周囲の組織の色素に及ぼす影響を最小に抑える。
 TinVantage レーザは直径1.5mm のシリカ光ファイバとホモジナイザを結合したQスイッチアレキサンドライト(755nm)レーザから構成され、コリメートされた平頂エネルギーをもつ処置用のビームスポットが得られる。レンズ付きのハンドピースを取り付けると、波長変換とビームスポットの調整(2〜5mmの範囲)が可能になる。その1つのハンドピースは20mm長のNd:YAG結晶の波長変換器が組み込まれ、アレキサンドライトビームから1064nmの出力ビームへの変換を60%のエネルギー効率で行う。さらに、もう1つのハンドピースを取り付けると、内蔵されたチタンリン酸カリウム( KTP)非線形結晶が1064nm 光の周波数を二倍化し、532nm 光の出力ビームに変換する。ハンドピースを簡単に取り替えることで、刺青を除去するための532、755および1064nmの波長を用いる患者の処置が可能になる。
 米ヴァンデルヴィールセンター(VanderVeer Center)の内科医と医学部長を務めるエリザベス・ヴァンデルヴィール氏は、シネロン/キャンデラの50ms のパルス継続時間をもつ2Hz、50mJ/cm2のNd:YAGレーザGentleYAGを使用して、このレーザがどのようにして皮膚を緊縮(「乳房の引上げ」もできる)するかを分かりやすく3件の論文で説明した。この処置は真皮内のコラーゲンの刺激による生成にもとづいている。
 また、シネロン/キャンデラのVbeamnPerfecta 595nmパルス色素レーザ(6〜8J/cm2フルエンスにおいて0.5〜10msパルスの処置パラメータ)を用いたポートワイン着色と眼の周りのくまの処置に関する数件の論文も報告された。これらのレーザ治療は血中のヘモグロビンを標的にして、増殖する血管を基礎疾患レベルで崩壊させる。
 米メイヨクリニック(Mayo Clinic)によると、レーザを用いるにきび除去の処置は、にきび炎症を引き起こすプロピオン酸菌属にきび(P. 座瘡)を標的にした青色レーザ、または真皮の深部にある油脂由来脂腺を加熱し収縮/破壊する長波長赤外レーザを使用する(4)。シネロン/キャンデラは大きなスポットサイズ(10〜12mm)と7〜9J/cm2のフルエンスをもつ1450nmの半導体レーザを用いたにきび病変治療の研究を行い、5回の処置を1ヶ月ごとに行うと、病変は57%の減少を示したと報告した。さらに良いことに、減少した病変数は処置が終了した6ヶ月後も変化しなかった。

図1

図1 左側の写真は532、755および1064nmのレーザ光を放射するAlex TriVantage による刺青除去の前(上)と後(下)(資料提供:G・ゴールドバーグ博士)を、右側の写真は色素病変治療の前(上)と後(下)を示している。(資料提供:S・キルマー氏)

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/01/201201_0042pa.pdf