高温下の歪み測定用の光ファイバファブリ・ペローセンサ

ラオ・ユンチアン、ラン・ゼンリン

157nm レーザ微細加工システムを用いてシリコンまたはサファイアファイバを直接書き込みする非常に正確なマイクロ光ファイバファブリ・ペロー干渉測定(MFFPI)センサは苛酷環境の測定に適している。

中国電子科学技術大学(University of Electronic Science & Technology of China )のわれわれのグループとウーシ・チェンジアン・オプティカルファイバセンシングテクノロジー(WuXi ChengDian Optical Fiber Sensing Technology)は、特注設計した157nm エキシマレーザ微細加工システムを使用して、一連の新しいマイクロ光ファイバファブリ・ペロー干渉測定(MFFPI)セ
ンサを開発した。これらのマイクロ光ファイバセンサは高品質インライン方式のファブリ・ペロー(F・P)エタロンをシリコンまたはサファイアファイバ内部に形成できるため、超小型、自己温度補償、高温(>300℃)耐性、遠隔測定距離(>10km)などの優れた多数の利点が得られ、大量生産も行うことができる。これらのセンサは苛酷環境における歪み、圧力、屈折率、温度および加速度を容易に測定できる。

歪み測定

苛酷環境センサ、とくに耐高温性のセンサは、実験力学、航空学、計測工学、採掘穴の石油/ガスセンシングなどの多数の応用がある。しかしながら、これらのセンサは製作が非常に難しい。高温環境下での電気センサの使用は、高温下での短寿命、非線形歪み、電磁干渉(EMI)に対する感受性、限られる温度範囲、限定される測定距離などの電子デバイスの欠点に囲まれる(1)。光ファイバセンサはEMI に対する不感受性、高温耐性、より長い遠隔測定距離などの多数の利点をもつため、これらの欠点を克服できる。
 高温センサに使われる光ファイバは、一般に、優れた高温安定性をもつシリカまたはサファイアファイバが使われる。とは言いながら、光ファイバに良好な高温耐性を付与することは容易でない。ファイバブラッググレーティング(FBG)とF・Pの干渉測定センサは商品化が成功しているが、紫外(UV)レーザを照射して書き込みをしたFBGセンサは>300℃になると長期安定性が悪くなる(2)。また、温度無依存光ファイバF・Pセンサは高温の用途に適していると考えられるが、これらのデバイスは、一般に、苛酷環境では壊れやすい多数の光部品から構成されている。
 光ファイバセンサの製作に成功するには3つの判定基準を満足しなければならない。第1に、正規の高温センサはすべてがファイバから構成され、分割された部品のない小型で一体構造のデバイスとして集積されなければならない。シリカやサファイアの光ファイバは広帯域ギャップ材料であるため、従来の方法を用いて全ファイバ方式のインラインセンサを精密に製作することは非常に難しい。第2に、このデバイスは1000℃までの温度を自動的に補償する必要がある。第3 に、このセンサは優れた再現性と低いコストでの量産が必要になるが、このことの実現は従来の人手による組み立てでは不可能に近い。
 われわれのチームは特注設計の157nmレーザ微細加工システムを使用し、集積度の非常に高いF・Pをファイバ上に直接製作して、これらの問題を解決した(図1)。われわれは157nm の光吸収係数が約20000cm−1と非常に高いことを見いだした。このことを利用して、シリカおよびサファイアファイバの高品質冷却加工を可能にした(6)。レーザ微細加工システムは157nmパルスレー
ザ、25分の1の縮小率をもつ集光システムおよび書き込み用ファイバを搭載する精密移動台から構成した。157nmレーザの最大単一パルスエネルギー、パルス幅および繰返し速度は、それぞれ35mJ、15nsおよび50Hzであった。

図1

図1 157nmエキシマレーザを用いる微細加工システムの概念図を示している。(資料提供:いずれの図も中国電子科学技術大学)

二つのセンサ方式

157nm 微細加工システムを使用して、第一の方式のMFFPIセンサを製作した。このセンサは標準サイズが数十ミクロンのシリカファイバの内部に微細な矩形ノッチ構造を持つ。書き込みをするノッチの25倍の大きさをもつ矩形鋼鈑マスクを通して、157nmレーザビームをファイバに投影する。ファイバ内部に製作されるノッチは二つの平滑で平行な反射界面をもつF・P干渉測定共振器を形成する。約26dBまでのすぐれたコントラストのフリンジが得られ、800℃までの高温下の精密歪み測定が実現できることを実証した(図2)。
 このセンサは共振器長の振動の変化を測定し、ε=ΔL/Lの式にもとづいて歪みを測定する。ここで、LとΔLはそれぞれ共振器長と共振器長に対する変化を示している。より重要なことは、このセンサが独自な共振器構造にもとづいて、温度を自己補償する独自な特徴をもつことにある。ファイバコアは空気ギャップのために長さ方向に自由に動くため、ファイバコアの熱膨張は共振器長の減少をもたらす。一方で、ファイバクラッドはレーザアブレーション後も存在するため、ファイバクラッドの熱膨張は共振器長の増加を引き起こす。その結果、増加と減少の二つの効果は温度の変化とともに相殺される。

図2

図2 マイクロファブリ・ペロー干渉測定(MFFPI)センサのSEM写真を示している(a)。その反射スペクトル(b)、歪み特性(c)、温度応答(d)が温度を変えて図示されている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/01/201201_0038feature05.pdf