自由電子レーザのシンポジウム開催、創薬分野などに期待

X線自由電子レーザ(XFEL:X-ray free electron laser)のSAC LA(サクラ)をテーマとしたシンポジウムが2011年12月3日に東京都千代田区丸の内で開催された。SACLAはSPring-8 ang strom compact free electron la serの略で、米LCLS(linac coherent light source)に続く世界で2台目となるXFELである。シンポジウムではSACLAの概要や現在の施設の立ち上げ状況が説明された。また評論家の立花隆氏がSAC LAの使用によって将来期待される成果について講演した。
 SACLAは今まで得ることが難しかったX線領域のレーザ光を発振する全長700mの実験施設。電子銃から発射された電子が加速管で加速され、アンジュレータで蛇行することによってコヒーレントなレーザ光を発生させる。大型放射光施設SPring-8(スプリングエイト)の十億倍と非常に高い輝度をもつ。またフェムト秒のパルス光により瞬間的な現象を捉えることができる。かつ現在1μm程度にビームサイズを絞っており局所的な観察が可能だ。
 とくに日本のXFEL独自の特徴が、小型であることと、調整開始から発振までの期間の短さだ。従来は品質の高い光を発振するためには大型化が避けられないというのがこの分野での見方だった。SACLAはそれに敢えて挑戦した。「日本の技術力があったからこそできたこと。小型化は普及に欠かせない条件でもあり、その道筋をつけたという点でSACLA の意義は大きいと考えている」と理化学研究所 播磨研究所放射光科学総合研究センター XFEL研究開発部門 部門長の田中均氏はいう。またLCLSは調整の開始から発振までに1年以上かかっている。一方SACLAは3ヶ月半で発振に成功した。
 SACLAは2006年に兵庫県の播磨科学公園都市にあるSPring-8に隣接して建設が開始され、2011年6月に初めて波長0.12nmのレーザ光を観測した。現在パルスエネルギーがサブmJ、波長は0.063〜0.28nmである。繰り返し周波数は10Hzで、今後60Hzにまで調整する予定だということだ。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/01/201201_0016wn03.pdf