「観測できなかった」特徴を明らかにする偏光差イメージングカメラ

非偏光の白色光カメラでは見落とされていた微妙な表面上の細部やテクスチャ、全体的な特徴が、リアルタイムの偏光差イメージングカメラによって観測できるようになった。これを可能にしたのは、「Detect POL」と名付けられた新しい偏光カメラアーキテクチャである。同アーキテクチャは、カナダのQ5イノベーションズ社が開発して特許を保有しており、シモン・ティボー教授が率いるカナダのラヴァル大学の科学者らと共同で、構築およびテストが実施された(1)。
 偏光差イメージング(PDI:polarization difference imaging)技術にはこれまで、画像データをシーケンシャルにしかキャプチャできないという制約があった。また、一般的にその速度は、単一のシーン内における偏光(POL)情報のリアルタイムな変化と比較してかなり遅いものだった。Q5イノベーションズ社が開発したイメージングおよびセンシング技術であるDetect POLには、カスタム構成のビーム分割構造が含まれる。幅広い視野にわたって偏光差画像を同時かつリアルタイムにキャプチャすることができ、従来のカメラでは「観測できなかった」特徴を明らかにすることが可能である(図1)。

図1

図1 「Detect POL」と名付けられた、リアルタイムの偏光差イメージングカメラは、独自のビームスプリッタを採用することによって実現されている。霧でかすんだ山並み(a)( b )や、従来のカメラ画像には映し出されない指紋(c)(d)など、隠れた細部を捉えることができる(提供:Q5イノベーションズ社)。

ビームの分割

霧や雲がかかっていたり、ほこりっぽかったり、水中であったり、あるいは、散乱した媒体を介した場面に対しても、対象物から返ってくる光が1% 未満でも偏光されれば、この偏光差手法を適用し、直線偏光データの2つの直交する状態を同時にキャプチャすることによって、隠れた特徴を非常に効果的に捉えられることが、POL研究によって明らかにされている。PDIでは基本的に、同一シーンの2つの画像を、直線偏光の2 つの異なる面でキャプチャし、デジタル処理によってそれらを互いに差し引くことが行われる。
 これまでは、2つの偏光情報の独立した面の分離に直線偏光フィルタを使用すること(透過光の強度と波長が制約される)と、画像処理がシーケンシャルであること(移動する対象物には適用できない)から、多くのリアルタイム応用に対して、PDIを適用することはできなかった。しかしQ5イノベーションズ社は、バイオミメティックの手法を採用して、任意の波長でリアルタイムにPDIを実行できるようにした。同社が構築した偏光ビームスプリッタは、サンフィッシュの網膜組織に見られる、直線偏光の直交面の構造ベースの分離を模倣する。
 この光学設計では、共通入力からの2つの特定方向のすべての直線偏光をに選択的にリダイレクトすることによって、各偏光画像の形成に使用される光量を最大化し、両方の偏光画像を同時に収集する。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/12/201212_0016wn02.pdf