光ファイバ増幅器の性能を高める高次モード

ジェフリー・ニコルソン、ジョン・フィニー、クリフォード・ヘッドリー、アンソニー・デサントロ、シャオピン・リュー

ますます高い平均パワーとパルスエネルギーのファイバレーザと増幅器が切望される中で、主要な性能制限因子である非線形性を抑制する手段の1つは、高次モードで動作させてファイバの実効面積を拡大することだ。

高出力ファイバレーザは、安定な横モード特性を持つビーム、大きな表面積対体積比に起因する容易な熱管理、軽量かつ頑丈で小型なパッケージングなどの従来の固体レーザを超えるいくつかの利点を提供する。しかし、光ファイバ増幅の利点は欠点を伴う。長い動作距離と導波路構造は、結局のところ高出力レーザのスケーラビリティを制限する誘導ブリルアンとラマン散乱ならびに自己位相変調などの光非線形性の原因になりうる。
 動作モードの実効面積の増大は対応する非線形性の抑制につながるので、多くの努力が基本(LP01)モードのサイズを拡大する多様なアプローチに向けられた。解答の1つは従来のファイバ設計のコアサイズを単純に増加させることだ。これは、原理的には、単一モード動作を維持しながらモード実効面積を拡大することができるとはいえ、コアの屈折率差が極めて低い場合に限られる。そのようなファイバは屈曲に極めて敏感であり、したがって、ファイバは曲がらずまっすぐに保たれなければならない。これらのロッド状ファイバはパワースケーリングには成功するが、コイル状増幅器としてのコンパクトなパッケージングや他の光ファイバへの簡便な融着接続などファイバ固有の形状からくる多くの利点を失うことになる(1)。
 もう1つのアプローチは、屈折率差を増強して、正確にはシングルモードではないファイバの基本モードで動作させ、不要な高次モードを各種の手段で取り除く方法だ。これによってより大きなモード領域と高効率のシングルモード動作が可能になる。高次モードの漏れチャネルとなるファイバクラッド内に配置されたホールとロッド、螺旋コイル状コア、直線状コアを囲む第2のカイラルコイル状コアなども活発に探求されている(2)〜(4)。しかし、基本モードで動作するファイバ増幅器は依然として重大な限界を抱えている。第1に、基本モードはそのサイズを増すとさらに不安定になる。第2 に、光ファイバがコイル化されると、屈折率の屈曲誘起変化が基本モードの実効面積のかなりの減少を引き起こし、超大型の基本モード実効面積を使うファイバ設計の利点が打ち消される。

高出力、低非線形性増幅へのHOM

米OFSラボラトリーズ社(OFS Laboratories)で開拓された代替アプローチは、多数のモードをサポートするファイバを設計し、次いで単一の特別に選択された高次モード(HOM:high-ordermode)で動作させる(5)。そのようなHOMファイバは、従来のラージモードエリア(LMA)ファイバの持つ900μm2に比べて劇的に大きな最高4000μm2 という実効面積の増加を許容し、低い非線形性レベルでの増幅を可能にする(図1)。
 これらの超ラージエリアモードにおける増幅の成功は高次モードがいくつかの驚くべき、そして多少直観と相いれない利点を持っているがゆえに可能になる。それらは同一面積を持つ基本モードに比べて光ファイバへの典型的な摂動によって引き起こされるモード結合に左右されないので、不要モードのコンテンツレベルがかなり低く抑えられ、安定した出力ビームを生み出す。それらは、屈曲によって引き起こされる面積縮小の影響もほとんど受けない。例えば、まっすぐな状態で実効面積(Aeff)が2000μm2になるように設計されたLP01モードを持つファイバは、ファイバが曲げ直径15cmのコイル化されると、面積が75%低減するだろう。しかし、LP07モードは同様な条件の下で面積がたった3% 減るだけである。結局のところ、超大面積を持つHOMファイバは、標準的な単一モードファイバへの簡便な融着接続を受け入れるのであれば作製可能である。

図1 

図1 従来式単一モードファイバでのLP01基本モードの実効面積(左上)と従来のラージモードエリア( LMA )ファイバの900μm2実効面積(左下)をそれらの相対的サイズをスケール化して比較した。しかし、LP011モードで動作するエルビウムドープ高次モード(HOM)ファイバで測定されたビームプロファイル(右)は、低レベルの非線形性でのファイバ増幅を可能にする、はるかに大きな4000μm2の実効面積を示した。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/12/201210-11_0036feature04.pdf