SWIR InGaAs FPA を用いた光子放射故障解析

ラフ・ファンデルミッセン、パトリック・メルケン

冷却された非常に感度の高い検出器は、半導体故障解析を含む、分光法、蛍光画像処理、光子放射計測における低照度測定の必須要素である。

高分解能分光法やナノチューブ蛍光画像処理、そして特に、半導体故障解析などに見られる光子放射計測といった分野において、ノイズを最小限に抑え、感度を最大限に高めるには、特別に設計された焦点面アレイ(FPA:focal plane array)が必要となる(図1)。このような回路は、非常に照度が低い、短波長赤外域(SWIR)や可視から近赤外域(VisNIR)のその他の画像処理においても必須となる場合がある。
 低暗電流、低ノイズ、SWIR域における感度という要件に対応するために、ベルギーのキセニクス社(Xenics)は、77Kでの動作に向けて最適化されたInGaAs(インジウムガリウムヒ素)検出器「XFPA-1.7-640-LN2」を開発した。回路は、ソースフォロワ検出器( SFD:source follower detector)読み出しをベースとしており、640×512ピクセルの解像度と20μmのピクセル間隔で高い感度を実現する。
 フレームレートは2.5Hz( 4 出力モードの場合)で、小さな関心領域を選択した場合はそれ以上に上げることができる。非破壊読み出しモードは、蓄積時間が長い場合の動作を簡素化する。液体窒素(LN2 )冷却によって、ノイズは非常に低いレベルに抑えられている(<20e-)。このような低い温度では、暗電流も低く(<5e-/s/ピクセル)することが可能だ。同素子は、0.9~1.6μmの範囲の波長域で感度を持つ(オプションで0.4~1.6μmに対応可能)。

図1

図1 故障点標定用に光子放射オーバーレイを搭載するメモリ素子の裏面写真。SWIR InGaAsカメラで撮影(提供: セミキャップス社(SEMICAPS Pte Ltd. )、シンガポール)

センサー設計

光検出器はシリコンベースのROICとともに集積されている。ROIC には、キセニクス社が自社開発したハイブリダイゼーション技術が採用されている(図2)。ピクセル構造は、優れたノイズ性能を特長とするSFD 段をベースとする。基本的な(簡略化された)ピクセル回路図を図3aに示す。
 SFDの主要な利点は、設計が簡素であることと、電力を供給する必要なく電荷を蓄積できることである。この利点からSFDは、ピクセルサイズの小さい大型アレイに最適である。さらに、ピクセル内に存在する素子が非常に少ないことから、いわゆるナルシサス効果が低減されるという利点もある。ナルシサス効果は、低温アプリケーションにおいて検出器の性能を著しく低下させる可能性がある。
 SFDの主な欠点は、入力ノード電圧の変化が電荷として現れ、それが回路の入力ノードの静電容量に蓄積されることである。しかし、低温動作で使用することを目的としているため、これは深刻な欠点ではない。低温動作では、不安定なバイアスの影響が、完全には消えないものの、大幅に低減される。
 すべてのピクセルは、共通の列バスを介して相互接続されており、アナログマルチプレクサ回路を介してシーケンシャルに読み出される。相互接続と信号経路は、ノイズ性能を最適化するために複雑さを排除した形で配線されている(図3b)。

図2

図2 キセニクス社の「XFPA-1.7-640-LN2」は、LN2冷却採用の高分解能SWIR検出器である。

図3

図3 XFPA-1.7-640-LN2 のピクセル構造は、ソースフォロワ検出器段(a)と列マルチプレクサ回路( b:簡略図)をベースとする。

動作モード

センサー素子は、NDR(非破壊読み出し、IWR〔integrate while read:読み出しながら蓄積〕とも呼ばれる)とITR(integrate then read:蓄積してから読み出し)という2 つの動作モードを持つ。両方の動作モードのタイミング図を図4に示す。NDRモード動作は、アレイ全体に対する同時グローバルリセットによって開始する。すべてのピクセルが同時にIR励起キャリアの蓄積を開始する。ただしピクセルの読み出しは、このモードでは同時には行われない(最初のピクセルと最後のピクセルの蓄積時間は異なる)。そのため、外部電子回路は必ず、最初のフレーム読み出しを後続フレームに対するリファレンスとして使用する。リークは非常に低く、蓄積時間は長いため、マルチサンプルの信号取得手法を適用し、複数のフレームを使用して結果の画像を構成することができる。
 ITRモードでは、すべてのピクセルが同時に蓄積を開始し、シーケンシャルに読み出される。この場合の積分時間は単純に、リセットとサンプルの間の時間となる。
 センサー素子には、容量性負荷を駆動可能な4つの異なる(選択可能な)出力がある。センサーは、WOI(window of interest)またはWindowingモードでの動作が可能である。冷却手段と素子の動作を容易にするために温度センサーが集積されている。

図4

図4 センサー素子は2つの動作モードを持つ。非破壊読み出し(またはIWR:integrate while read )モードとITR(integrate then read)モードである。両方の動作モードのタイミング図を示す。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2012/12/201210-11_0020feature01.pdf