太陽電池接合部になる可能性をもつコロイド量子ドットフォトトランジスタ
アルミニウムドープ酸化亜鉛上の硫化鉛量子ドットのサブ単分子層は光電界効果トランジスタを形成し、そのバンドギャップからは光起電力素子への応用に適した波長可変性が得られる。
フォトダイオードや光伝導体の代わりにフォトトランジスタを使用して光を捕捉する概念は魅力的だ。例えば、光電界効果トランジスタ(光FET)のようなフォトトランジスタは、暗電流の低い光伝導検出器としての可能性を備えている。
実用性をもつ光FETの創成には 4つの条件が必要になる。第一に、光電子は増感材料から電子アクセプタチャネル(EAC)へ移動しなければならない。第二に、EACを流れる二次光キャリアは往復し、光電流を発生しなければならない。第三に、増感層はすべての光を吸収し、すべてのキャリアを効率よくEACに注入できる十分な厚みが必要になる。最後に、EACの厚みは十分に薄くして、暗電流の発生を低くする必要がある。光FETは応用可能な素子へと進歩している。カナダのトロント大学(University of Toronto)の研究者たちは、硫化鉛(PbS)コロイド量子ドット(CQD)を増感材料にした可変波長量子ドット光FETを作製することによって、4つの目標のうち2つが達成されたと報告した(1)。この光FETはCQDを適切に改質することでバンドギャップの波長可変を得ている。
異なるバンドギャップによる試験
このCQDは「サブ単分子層」として蒸着され、接続のない単分子層量子ドットの領域とCQDのない領域がパッチワークのように混在する。CQDパッチは相互の接触がないため、この配置は単分子層の電気伝導率が増強されない設計となり、研究者の実験から明らかなように、電気伝導率の増強によらないチャネルへの電子注入が集中的に起こる。ガラス基板上の事前に形成された金電極のナノパターンには膜厚50nmのアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)のEACが蒸着された(図1)。このEACは研究のために3mmの長い電極が2.5から100μmの異なる間隔で配置された。3種類のAZO膜が5%、10%、20%の酸素分圧下で蒸着された(蒸着時の酸素分圧が高いほど、AZO膜の電子との親和性は高くなり、電気伝導率が低くなる)。これらのCQD は0.5mg/mLの密度のオクタン中で蒸着され、接触パッドの近傍のAZOは除去され、活性領域だけがサブ単分子層で覆われた。研究者たちは走査電子顕微鏡法を使用して、CQD膜の不連続性を確認した。
量子ドットサイズの異なるCQD の4つのバッチを試作し、730、854、950および1475nmのバンドギャップが得られるようにした(図2)。同一の試料を用いて 4つの異なるバンドギャップを生成する方法も試験された。すべての試料は同一の条件下、つまり225μW/cm2の強度と0.2Hzの変調速度をもつ627nmのレーザ光が照射され、1000V/cmの電圧を印加して測定された。
光電流はCQDのサイズが大きくなると増加したが、このことは量子ドットが大きいほど赤色光の吸収が増加することによる。しかし、いずれのCQDサイズも光電子は効果的に移動した。
(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/1112feature03.pdf