低コストの原子間力顕微鏡を構築するピエゾナノポジショナ

ジェームズ・F・マッケイ、ボウ・ブロスマン、シャノン・ゴルバーニ

ナノポジショニング産業では、分解能、線形性、信頼性が改善される一方、価格は下がり続けている。今や、エンジニアは標準的な光学部品と既成のナノポジショナを使って高品質な原子間力顕微鏡を組み立てることができる。

走査型プローブ顕微鏡(SPM)は30年前に発明され、その後間もなくして、商用SPM機器も入手可能になった。現在、原子間力顕微鏡(AFM)を含む多数のタイプのSPMシステムが市販されているが、それらはすべて同じ原理で動作する。スキャナが表面感知プローブをラスタ動作(x、y)で試料表面上を移動させながら、プローブの出力信号を使って表面上のプローブの垂直高さ(z)を制御する。次いで、表面に対するプローブの応答を使って、x、y、zにおける表面のトポグラフィー画像を生成する。SPM機器の動作制御は一般にいくつかの形のピエゾアクチュエータを使って実行される。SPMシステムは一般に学術研究や半導体製造などのハイエンドな商業用途のための高価なイメージングツールとみなされているが、工業的な摩耗試験、表面特性研究、光アンテナ研究などの多数のアプリケーションにおいてもSPMの高解像度イメージング機能の恩恵を受けられるはずだ。しかし、最も入手しやすい機器が高価で、熟練を要するため不可能である。永年にわたって、SPMシステムを販売する会社はナノポジショナを「アップグレード」機構として提供してきた。その動機は、ナノポジショナが統合された絶対計測型位置センサ、クローズドループフィードバック制御、サブナノメートル解像度、並外れた走査線形性が得られると仮定するならば、明確である。市販のナノポジショナは極めて頑丈で、直線運動を提供し、単体ピエゾアクチュエータ特有のクリープ、ヒステリシス、アーチング動作がない。2、3 のSPMメーカーは標準製品にナノポジショナを一体化させて性能改善を実施している。このタイプの一体化は、単体ピエゾアクチュエータまたはチューブスキャナを上回る性能が得られるが、SPMコストが高くなりがちで
ある。ナノポジショナは分解能、線形性、信頼性の改善が進む一方で、価格は下がり続けている。それゆえ、市販のSPM機器の購入に対する代案は、既成のナノポジショナと標準的な光学部品を使って高品質で、費用効率が高いシステムを構築することである。ナノポジショニングメーカーの米マッドシティラボ社(Mad City Labs)は既存のSPMシステム用の組み込みスキャナとして多数のステージを販売してきた。そして顧客が独自のシステムの構築を望むならば部品も販売する。

表面‐プローブ考察

独自のSPM機器を組み立てる時、そのプロセスにおいて早めに決定しておかねばならないことがいくつかある。表面感知プローブのタイプによって、その用途に必要なナノポジショナのタイプも決まるであろう。多くの商用SPMシステムは表面/プローブ相互作用の測定に光偏向法を使っている。この技術は非常に高効率で、高分解能の画像を形成する一方、プローブの精密なアラインメントとオペレータの高度の技能を要求する。さらに、そのようなプローブシステムの構築の際にも高度な知識と熟練した作業が必要になる。
 最近、スイスのナノセンサーズ社(Nanosensors)によってアキヤマプローブまたは Aプローブ(www.akiyamaprobe.com)共振センサが製品化された(図1)。すべてのチューニングフォークベースのセンサと同様に、アキヤマプローブは「自己センシング」型であり、いかなるアラインメントも必要としない。チューニングフォークセンサは取り付けが容易で、専用エレクトロニクスを使って動作させる。アキヤマプローブにおいては、プローブチップ/感知レバーが標準チューニングフォークの尖又間に取り付けられる。チューニングフォークが振動すると、それに応答してカンチレバーは上下に振動する。チップが試験対象の表面と相互作用すると、チューニングフォークの振動数は変化するが、一定の振動数を維持しようとするため、それを制御信号として z軸ナノポジショナを上下に動かすことができる。アキヤマプローブの振動振幅は約1μmと非常に大きいので頑丈であるが、表面感度は光偏向プローブよりも低い。この大きな振動振幅ゆえに、アキヤマプローブは粗表面アプローチにおいても簡単には損傷を受けない。第2の例は、標準チューニングフォタングステンワイヤを接着させて使用する共振プローブである。このタイプの自家製プローブはさほど頑丈でなく、アキヤマプローブに比べて破損しやすいが、かなり小さい振動振幅とより優れた表面感度を持つ。両タイプの共振プローブはチップ/表面の相互作用周波数変化を制御信号として使用可能な電圧に変換するために位相ロック検出技術が必要である。マッドシティラボ社のMadPLL計測パッケージは、共振センサ用の完全な信号調製を提供し、かつこの機能も実行する。これはプローブボードとプローブセンサプリアンプ付きで、自動化された寄生容量補償、統合された z軸比例積分ループコントローラ、全ソフトウェア制御のためのUSB2.0インタフェースを装備している。アキヤマプローブを使用しても、センサは、新しいセンサプローブのエレクトロニクスセットアップが高速で、完全に自動化されているため、交換に要する時間は数秒ですむ。チップ交換の容易さとソフトウェアの自動化の結果として、このタイプの機器の使用にあたって高い専門知識は必要でない。

図1

図1 アキヤマプローブ共振表面プローブセンサでは、カンチレバーと鋭いチップが水晶チューニングの尖又を橋渡ししている。カンチレバーが尖又運動に対して垂直に振動している一方、尖又は反対方向に振動する。(資料提供:ナノセンサーズ社)

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2014/05/1112feature02.pdf