速度の潜在能力を生かしたスマートICCDカメラ

アントワーヌ・ヴァラグナ、ジェラルド・ケアンズ、ゲーリー・ハンコック

撮像と分光の研究に使われる最新世代のICCDカメラは、特注ソフトウエアによる新しいアプローチを用いた信号読み出しの管理と増倍素子の開閉を用いて、毎秒数千の画像またはスペクトルを連続モードと毎秒数万のバーストモードで検出できる。

増倍CCD(ICCD)カメラは高い時間(高速ゲート)分解能と、電子増倍CCD(EMCCD)では非常に難しい単一光子検出機能が得られる(1)、(2)。従来の研究用ICCDは信号取得サイクルが遅く、携帯性にも制約がある。そのため、さまざまな分野から、より迅速に正確な情報を取得したいという要求を受けていた。その要求には生産ライン内プロセスと品質管理、遠隔地からの健康問題の検出および監視、高感度発光分析、光退色性生体試料の分析などのさまざまな要求が生まれていた。新たに登場した「インテリジェント」取得モードのカメラは、今日のICCDの能力を完全に生かし、高速で高信号対雑音比(SNR)のデータを取得できる。
 ICCDは画像増倍素子と冷却したCCDアレイから構成され、両者を光ファイバプレートで接続して、最高の光透過性を実現している。光子が光電陰極(入力感光層)に入射すると、時間的分離が正確なナノ秒速度の信号のゲーティング、つまり光シャッタとしての開閉が行われる。発生した光電子は加速され、薄いハニカム構造のマイクロチャネルプレート(MCP)に向かう。この光電子の雲はMCPの狭いチャネルの内部で数百または数千倍に増幅される。次に、蛍光体スクリーンを用いて電子雲から可視光子への変換が行われ、可視光子は光ファイバプレートを通過しCCD上に到達して検出される。最後に、検出された信号は画像またはスペクトルとして読み出される。

クロップモード

物質アブレーション、ラジオ周波数プラズマ動力学分析、レーザ誘起蛍光(LIF)による粒子などの物体追跡、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)による原子/化学顕微分光マッピングなどのさまざまな分野のパルス励起誘導現象の研究は、高い取得速度が必須になることが多い(図1)。これらの速度の要求を満足するには、高速過渡挙動の時間サンプリング周波数の最大化または最短時間でのSNRを可能にする同一現象の多重信号蓄積が必要になる。実験からの有用な信号をCCD画素行列の底部の数列(つまり、直列読み出しレジスタに隣接する列)に精密に集光すると、「クロップモード」として知られるモードの使用が可能になり、毎秒数百までのサブ画像または毎秒数千のスペクトル(sps:spectra per second)を連続的に取得できる。専用ソフトウエアインタフェースを用いてセンサの低い部分上の実際に照明された列数を明確にすると、ユーザはクロップモードを用いることで、この特定部分だけの露光後のデータを読み出すことが可能になる。次の取得が開始されても、最後の露光はマスクされた読み出しレジスタを通して数百メガヘルツの速度で読み出しノードに固定され、読み出し回路は最高の状態で管理され、最高速の取得速度が得られる。
 撮像光学系の注意深い選択と位置決め、また分光計の場合の光ファイバ結合は、有用な信号を少数のセンサ列上に精密に結像し、センサの活性領域の上側部分に入る迷光を最小にするには
必須となる。クロップモードはどれほど高速に動作するのだろうか? クロップモードの高速動作は使用するセンサの列数に依存する。13×13μmの高分解能画素から構成される標準の1024×1024画素アレイの場合、1024画素×10列の照明領域を設定すると333Hzの高いフレーム速度が得られる。
 分光センサの場合の取得速度も大幅に向上する。読み出しスペクトルは一次元なので、重要な情報は基本的にCCDの縦列の強度となり、一般には試料中の発光信号の位置に関係する空間情報が不要になる。したがって、CCDの1つの縦列内にあるすべての画素は全信号の実際の読み出しが行われる前の読み出しレジスタに蓄積される。その結果、平均アクセススペクトル速度は3500sps以上になる。

図1

図1 アンドール社のiStar CCDカメラとShamrock 303分光 計と用いた銅合金の時間分解レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)の測定データを示している。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/11/1111feature02.pdf