産業分野の非破壊深さ分析をサポートするOCT
医学とバイオフォトニクス分野における貴重なツールとして広く知られる光コヒーレンストモグラフィーは、プロセス制御などの工業用途でも重要になってきた。
光コヒーレンストモグラフィー(OCT)は、非常に短期間で、生体組織の詳細で豊かな断層像を生成する標準的な非侵襲生物医学技術にまで発展した。この技術は驚くほどの速さで医学分野内に広がり、今や、産業市場へ進出しつつある。OCTの有望な産業用途は、製造工程で多層物体をインライン検査するための費用対効果が高い品質改良ツールである。
OCTの巨大な商業的可能性が、2010年9月にカナダのミレニアムリサーチグループによって提出されたリポートによって証拠づけられた( 1)。このグループの5年予想によれば、OCT市場の平均年間成長率は60%になるだろう。ただし、この推定は、OCTが米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)のジェームズ・フジモト氏(Jamses Fujimoto)によって1991年に導入されて以来、最初の広い応用分野として出現した医療市場に基づいていることに注意すべきである。
その当時、OCTを使えば生体組織の深層の詳細で豊かな画像を取得できることが直に明らかになった。これは眼科医にとって特別な価値と便益性がある。今や、ある種の薬のコントロールされた分配に重要な、医薬品における機能層の厚さや均一性の測定、血管検査、腎臓の三次元イメージングなど、多くのほかの医学的応用が現れつつある(2)。
将来的にはおそらく、OCTイメージングは、すでに確立されている多数の医療手法に重大な影響を与え、現行の標準的な業務を一変させることにもなるだろう。ほんの 1例だが、喉頭部の癌性増殖の早期発見における今日の「最も理想的な検査」は、生検を実行することである。すなわち、疑わしい小さな組織片を採取し、それを処理して研究室で顕微鏡検査を実施する。しかし、喉頭部の生検は局所麻酔を必要とする著しく侵襲的な方法であり、患者を永久的に声がかれた状態にしかねない。
ビデオ喉頭鏡検査と組み合わせたOCTは、侵襲的な生検を、表面と深層の組織異常を外来によって検査するトモグラフィに置き換えるという、はるかに穏やかな選択肢を提供するであろう。麻酔薬も病変組織への直接的な物理接触もまったく必要ない。この例は、同様な検査制約があてはまる、工業用途に対する良い指針になる。産業におけるOCTの利点は、加速されたプロセスフローによって実現される原価低減と品質改良という形で現れるであろう。
超音波検査法に類似したあるいは代替可能な高周波検査法としてのOCTは、マイクロメートル領域の深さに達しても、非常に高い解像度の画像を提供する。OCTで到達可能な侵入深さは、試験材料のタイプと使用された波長によって決まる(図1)。OCTの侵入可能深さは6mmを超えるため、OCTは共焦点顕微鏡法の領域と、超音波や磁気共鳴イメージング(MRI)のような他の計算機トモグラフィ(CT)法の領域との橋渡しになりうる。
OCT:その基礎
光コヒーレンストモグラフィは試料に接触または損傷を加えることなしに試料内部の断層画像を提供する(図2)(3)。それゆえ、この技術は品質保証やプロセス制御などの工業的応用に対して革新的な方法を約束する。リアルタイムOCTは連続的な製造や組立工程を監視することができる。この技術は、試験物体に入射する光源からの直接光と物体から反射された光との、ハーフミラーまたはビームスプリッタを通した干渉に基づく(図3)。この干渉を達成できる多くの方法の中で最も一般的な配置は、スペクトロメータを使用するスペクトラルドメインOCTである。この場合、広帯域光源はハーフミラーを通して低コヒーレンス長の光を試験物体に照射する。このビームの一部はビームスプリッタによって反射されて参照鏡に導かれ、参照鏡はハーフミラーを通してビームをスペクトラムアナライザへと供給する。そのとき、試験物体によって反射された光が参照ビームと干渉する。その結果、スペクトラムアナライザはこの干渉縞のスペクトルを出力し、これが光電ラインセンサによって電気強度信号に変換される。このスペクトル情報のフーリエ変換によって適切な空間強度データが生成される。この配置の欠点はミラーの相対的に大きな移動範囲であり、試験物体内の意図された検査深度全体をカバーするために数ミリメートルに及ぶ可能性もある。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/10/1110feature05.pdf