新規の研磨流体の利用を実現した小型MRFマシンの新しい用途

磁性流体仕上げ加工(magnetorheological finishing:MRF)は、その名前が米QEDテクノロジーズ社(QED)の代名詞にもなっている光学製造技術であり、それには正当な理由がある。かつてのソビエト連邦で発明され、さらに米ロチェスター大学の光学製造センターでさらに発展したMRFは、その後、QED社によって商用化され、以来、同社によって広く発展してきた。MRFでは、研磨剤をドープした流体の剛性を磁気的に制御できるため、微細に調節された成形と研磨工程が可能であり、とりわけ、精密な球面加工に理想的である。
 典型的なMRFマシンは一辺が2、3メートルになるほど大型だが、大抵の光学製造施設であれば容易に収まるサイズである。しかし、QED社の研究チームは、標準のMRFマシンは不都合だが、より小型でフレキシブルなMRF装置ならば、研究所での開発用に使えるなど、他の潜在的なMRF用途が存在することに気づいた。結果としてQED社は、はるかに小型で、しかも使用可能なMR流体のタイプにほとんど制限がない「ミニMRF」マシンを考案した(図1)。QED社はこの技術を 5月にニューヨーク州ローチェスターで開催された国際光工学会によるOptifab 2011で初めて公開した。
 QED社のアンドリュー・クラビーク社長は、「今や、MRFは成熟し、十分に確立された技術であるが、改善の余地はまだ残る。用途を制限しているMRFシステムの領域の1つは流体輸送システムである。現在のMRF流体輸送システムでは、MR流体は多数の制御装置とノズルを通してリボン状のホイールの上に送り込まなければならない。これは流体の化学組成とレオロジー特性、それによる研磨工程の除去速度の選択肢も制限する。新しいMRFプロトタイプでは、これらの制限が緩和され、さまざまな材料と用途に最適な流体を開発するためのさらに大きなフレキシビリティが得られている。新しいプロトタイプはよりモジュール化が進んでいるため、多種多様なマシンおよび工程においてMRFを利用することが可能になるであろう」と語っている。

図1

図1  改良流体輸送システムを備えた小型MRF研磨ヘッドは、エンドテーブル上に十分に納まる。研磨ホイールはそのトップにあり、MR流体のリボンはホイールのリム上に保持されている。(資料提供:QEDテクノロジーズ)

小型流体輸送システム

QED社は、現在の同社のMRFマシンにとって標準ホイールサイズである、150mm直径のホイールのコンセプトを実証した(このホイールは磁気特性を持っているため、研磨のために回転させてもその上に流体を保ち続ける)。QED社は20、50、200、および370mm直径のホイールを装備したMRFマシンも提供しており、その中のいくつかはマシン上で相互に交換することが可能である。そして、ホイール自身はさほど小さいものではない。大幅に小型化されたのは流体輸送システムである。クラビーク氏は、最初の挑戦は、ホイール上の研磨リボンを成形し、安定した材料除去速度の確保に必要なMR流体物性の監視コンポーネントのすべてを装置に統合することであった、と指摘している。基本的アイデアがまとまるとすぐに 1つのプロトタイプが組み立てられ、コンセプトの実証に向けて試験が行われた。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/1109wn02.pdf