「完全な」干渉コーティングの開発を牽引するソフトウェア

ジェニファー・D・T・クルシュヴィッツ

光学コーティングの設計ソフトウェアの検討は、それぞれのソフトウェアパッケージに使われているいくつかの強力な数値解析から始まるであろう(1)。ソフトウェアパッケージには複素合成や修正法が組み込まれているため、ユーザの多くはソフトウェアパッケージを信頼していると主張する。一方で、彼らの製造装置で生産するにはあまりにも複雑なものが設計されると主張することもある。ユーザはどのようにして合成プロセスを止めるタイミングを知るのだろうか? 設計者は絶対ゼロに近いメリット関数を使うことで、ユーザのニーズを満足し、生産現場で反復して使える設計を製作できるのだろうか?
 ソフトウェア開発者は、修正と合成のレベルが強力で、使いやすいインターフェイスが組み込まれ、スペクトル特性データの導入や計算結果のプリントアウト機能をもつソフトウェアの開発に注力してきた。ごく最近の開発は複雑設計による生産可能性のユーザ評価を支援する環境の創成に移行している。コーティング工場は生産の再現性が第一の優先順位になるため、そこでは概念設計用の効率のよい評価ツールへの要求が増大している。

特性評価法

設計性能の理解には設計に用いる材料の光学的性質を効率よく特性評価する方法が必要になる。分散情報のない材料を使用することは生産的でなく、そのようなことは初心者への基本設計理論の教育の場合に限られる。設計レイヤーの光学的性質を厳密に理解すると、実際の性能をソフトウェアの枠内で把握することが可能になる。ソフトウェアパッケージの多くは、小量の吸収をもつ誘電材料を評価できる分散モデルを採用している。コーティング工場はエレクトロクロミクス、透明導体、金属結合層などの新しい材料を使用した設計を開始し、それらの加工を最適化して、水による吸収の少ない材料やUV透過率の大きな材料を生産している。したがって、屈折率と吸収の鋭い変化の特性を評価できるモデルが必要になる。n(λ)とk(λ)を参照する二つの新しい分散モデルは、非常に薄い金属層などの材料に生じる屈折率と消光係数の鋭い変化の特性を評価できる(図1)(2)。これらのモデルは伝統的な誘電材料のUV吸収端、3~5μm領域の水の吸収および8~14μm領域のレストラーレン帯を特性化できる。n(λ)とk(λ)のモデルは空気中の単層膜ばかりでなく、後処理した多層膜の分析にも適用できる。ニッケルクロム(NiCr)などの材料の結合層は多層膜に埋め込まれると、空気中のNiCr単層膜とはまったく異なる光学的性質を示す。

図1

図1 10nm厚の銀膜の反射および透過特性を示している(a)。ここでxは測定データ、点線はフィッティングデータ。この非常に薄い層の屈折率と消光係数の分散モデルも示している(b)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/0034sc.pdf