光ファイバの屈折率プロファイルの新しい方向からの測定

アンドリュー・D・ヤブロン

いくつかの新しい位相測定法はプリフォームではなく、光ファイバ自体の屈折率プロファイルを測定する。これらの方法は屈折率プロファイルをファイバの側面方向から測定するため、ファイバの全長方向のデータを得ることができる。

光ファイバの屈折率プロファイル(RIP)の正確で完全な知見は、単一モードファイバの波長分散、多モードファイバのモード分散、マクロおよびマイクロベンドの挙動、相互接続損失、非線形光学相互作用などの光ファイバのさまざまな光学的性質の予測と理解にとって極めて重要なことだ。驚くことではないが、ファイバのRIPを測定する最初の方法はファイバ自体が登場して間もない1970年代に開発された。
 これまでの市販の測定器は屈折近接場(RNF)による方式が主流であった。最近、いくつかの新規で強力な測定法が開発され、そのいくつかはすでに商品化されている。これらの新しい技術は、定量的位相顕微鏡法(QPM)、微分干渉コントラスト顕微鏡法(DIC)、計算機トモグラフィ(CT)および多波長干渉測定法(MWI)が含まれる。これらはバイオメディカルイメージングの技術から発想され、高速計算機処理と高感度高分解能アレイ検出器を用いて実現された。
 光ファイバの多くはプリフォームから線引され、プリフォームのRIPは生産工程のいくつかの段階において測定される。プリフォームのRIPは比較的正確に測定できるが、いくつかの理由からファイバの直接測定が望ましい。まず、ファイバの線引効果はファイバだけに現われる。またいくつかのプリフォームは線引塔で加工されることもあるため、線引直前にの測定することは難しい。そして、光ファイバの使用者の多くはプリフォームの生産者のRIPデータにアクセスできない。ファイバは試料サイズが小さいため、そのRIPの測定は基本的にプリフォームよりも難しい。

屈折近接場法(RNF)

RNFによる測定法は集束レーザスポットを使用して、へき開したファイバ試料の端面を走査し、試料から逃散する光量を測定して屈折率を決定する(図1)(1)。この方法は基本的に振幅を測定し、単一画素検出器の応答を用いて屈折率を計量するため、RNF計測器の精度は較正ドリフトの影響を受ける。この方法は光干渉法で屈折率プロファイルを測定した標準ファイバによる周期 的な再較正が必 要になる。また、RFN測定を不可能にしてしまう欠陥や汚染のないへき開面を得ることも容易ではない。言うまでもないが、回折格子や融着接続などに生じる軸方向の屈折率変化をRNFでマッピングすることはできない。
 RNFとは違って、新しい方法は位相を測定する。このことはアレイ検出器の異なる画素の相対輝度が位相を符号化し、RIPの情報が得られることを意味している。また、これらの新しい技術は、ファイバ試料のRIPをへき開した端面ではなく、横方向から(つまり、側面を通して)測定する。これは光ファイバのRIP測定のまったく新しい方向であり、ファイバグレーティング、融着接続、物理的テーパ構造、キャピラリ・ファイバ、方向性結合器、ファイバタップなどのRIP測定が可能になる。

図1

図1  RNFの概念図(a)と単一モードファイバのRIPデータ(b)を示している。RIPデータは測定された屈折率と純粋石英ガラスの屈折率との差のΔnとして表される場合が多い。

微分干渉コントラスト法(DIC)

この顕微鏡法は透明生体試料の位相変化から画像コントラストを取得する方法として長年使われてきた。微分干渉顕微鏡法の光ファイバへの最初の応用は、オーストラリアのメルボルン大学(University of Melbourne)と中国の精華大学(Tsingha University)の研究グループが個別に行った。位相コントラストは 2本の探測レーザビームが生成する数百ナノメートルの横方向変位
の光路長差から形成される(2)。この方法は横方向の軸と厳密な単一波長を使用する。干渉は偏光から生成されるため、ファイバ内部の残留応力と歪から生じるファイバの複屈折が影響を及ぼす。偏波面保存ファイバの場合の影響は著しい。多くの横方向位相イメージング技術と同様に、試料からの光線のすべての反射は無視できるほど小さいと仮定する。

定量的位相顕微鏡法(QPM)

このアプローチはメルボルン大学が光ファイバとバイオメディカルの両方への応用を目的にして開発した。QPMの場合、ファイバ試料内部の位相の空間分布は、わずかにずれた焦点面から取得するファイバの拡大画像から決定される。QPMは融着接続などの軸方向へテロ構造の屈折率のマッピングに使われてきたが、その他の横方向技術と同様に、軸対称性をもたないファイバ試料に適用するときはトモグラフィが必要になる。DICと同様に、QPMは単一波長による測定であり、ファイバブラッググレーティングのサブミクロンの屈折率変動やキャピラリ・ファイバの空間内部に捕獲されたミクロスフェアの測定に使われてきた(3)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/1109feature05.pdf