微小共振器とツリウムファイバ設計による中間赤外周波数コム

中間赤外スペクトル領域への関心が分子指紋、赤外線対抗手段、近接場顕微鏡法、材料加工などへの応用に向けて次第に強まっている。中間赤外性能をさらに向上させるためには計測ツールが重要になるとの認識に立ち、ヨーロッパと米国の研究チームは 2つの異なる方法を使って中間赤外周波数コムを発生させた。2.5μm波長付近の10THz以上に広がる微小共振器ベースの周波数コムが、独マックス・プランク量子光学研究所、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、独メンロー・システムズ社、独ルートヴィヒ・マクシミリアン大学、仏オルセー分子科学研究所の研究チームによって初めて開発された(1)。他方、2μmウィンドウ付近の260THzをカバーする最初のツリウム(Tm)ベース自己参照型中間赤外周波数コムが、米IMRAアメリカと米スタンフォード大学の研究チームによって開発された(2)。設計が異なるため、それぞれが特定の光周波数計測用途をターゲットとして独特の機能を提供する。

微小共振器によるコム

中間赤外周波数コムは一般に、スペクトル帯域幅とコム線あたりのパワーを制限する非線形プロセスによる近赤外放射の周波数変換によって生成される。初めての代替法、Qファクタの極めて高いウィスパリング・ギャラリーモード微小共振器における三次カー非線形性を利用することによって、コム線の間隔が広く、1本あたりのパワーが大きい、小型で広帯域の周波数コム発生器が可能になる。
 直径が100μmから1mm、Qファクタが約109の結晶フッ化マグネシウム(MgF2)微小共振器を、2.4から2.5μmの範囲で波長可変な連続波(CW)光パラメトリック発振器によって励起する。微小共振器からの周波数成分を結合し、光ファイバ系の装置に戻すテーパー付きファイバ導波路によって数百mWのパワーが送出される(図1)。微小共振器は、MgF2材料の屈折率の温度係数と熱膨張係数がともに正なので、ポンプレーザに熱的に自己同期させた状態を維持し、四光波混合(FWM)プロセスによってCWポンプレーザから直接周波数コム線を生成する。600mWの2.45μm光によって励起された直径700μmの微小共振器(フィネス1.2×105)では、ポンプ波長付近に中心がある108GHz間隔のコム線をもつ200nmまたは10THz以上をカバーする光周波数コムが発生した。
 マックス・プランク量子光学研究所の博士研究員であるクリスティン・ワン氏は、「この簡単なアプローチは材料の透明窓の全域にわたって中間赤外コムを生成すると見込まれる。この微小共振器設計は10~100GHz範囲の大きなコム間隔を生成するため、個々のコム線へのアクセスが可能だ。1本あたりのパワーが高いため、われわれの設計は緻密な媒質の選択的周波数励起と振動分光法に非常に適している」と語っている。

図1

図1  微小共振器を使って,2.5μm中心の中間赤外周波数コムが四光波混合効果により生成された。(資料提供;マックス・プランク量子光学研究所)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/09/1109wn03.pdf