より多くのチャンネルを獲得するガイガーモードAPD
ガイガーモードAPDのモノリシックアレイは医用画像から高エネルギー物理学までの応用に役立つ新しい研究ツールになった。
ガイガーモード・アバランシェフォトダイオード(APD)が普及するようになり、さまざまな企業が市場に参入するようになったため、この技術のさまざまな実装の舵を取ることは次第に難しくなってきた。APDはすべて同一の基本原理にしたがって動作するが、類似点はそこまでである。異なるガイガーモードAPDを分類する一つの簡単な方法は、含まれるマイクロピクセルの数による分類だ。
単一ピクセル実装は一般にSPAD(単一光子アバランシェダイオード)と呼ばれている。小型(約100μm)のため熱電冷却が容易であり、結果としてダークカウントが非常に少ない。SPADのフォトンカウンティング速度はリセット時間(または「不感時間」)に依存する。このリセット時間を短縮し,ダイナミックレンジを拡げるために、能動クエンチング回路が広範に研究されてきた(1)。もう一つのタイプのガイガーモードAPDは、マルチピクセル実装(複数のマイクロピクセルのすべてが共通のカソードとアノードに共に結合されている)であり、これは伝統的な光増倍管(PMT)と同様に多光子イベントをカウンティングする能力をもつため、一般にシリコン光電子増倍管(SiPM)として知られている。この実装では、多光子イベントにトリガを加えて、それをタイミング測定に利用することもできる。
マルチピクセル実装が初めて市場に導入された時、多くの努力がこのデバイスの評価に向けられた。研究者たちが数十年にわたってPMTの物理と応用に取組んできたことを考えても、やるべきことはたくさんあった。比較的新しい固体技術は、成熟した真空技術の不足を克服することができるのだろうか? マルチピクセルフォトンカウンティングデバイス(MPPC)SiPMについては誇大宣伝があったし、今でもある。浜松ホトニクスのアプリケーションエンジニアとしての私の主な任務の一つは期待管理である。どのような検出器をも超える能力をこのデバイスに期待しているユーザがいる一方で、MPPCがここ数十年間使用してきたPMTと同じようには動作しないと落胆しているユーザもいる。実際のところ、MPPCはPMTを単に置き換える後継機器などではまったくない。他のタイプの検出器と同様に、MPPCにはMPPC自身のユニークな特性がある。
MPPC
MPPCのユニークな特徴の一つは単一光子パルス信号の波形である。ガウス形に近いパルス波形をもつPMTとは異なり、MPPCは立ち上り時間(tr)は比較的短いが、パルス減衰時間(tf)は比較的長い。これは、ユーザがオシロスコープでMPPCパルスを観測するときに、まず気付くことだ。MPPCの初期の主な用途が高エネルギー物理学と医用画像であったため、タイミング解像度が主要な関心キーパラメータであった。そして、いまでも短いtr と高いパルス波高をもつパルス発生を目標とする研究が中心である(図1)。
単一光子タイミング解像度の初期結果は非常に有望であり、MPPCで最初に公開されたデータシートにおいて220psのFWHMが報告された(2)。しかし、このMPPC動作のモデリングとシミュレーションが行われた後、初期の結果を改善するために微調整することが可能な一対のパラメータが同定された(図2)(3)~(5)。
製造経験
MPPC内に変動があるときは常に、その性能に悪影響が及ぶ。タイミング解像度を改善する初期努力は、この変動性を制御することに集中した。試みられた最初のステップは、マイクロピクセルピッチを一定に保ちながらマイクロピクセルサイズを縮小することによって、クエンチング容量(Cq)とピクセル容量(Cd)の実際的な調整可能性を確かめることであった。ピクセルサイズの縮小だけでCdが低下し、Cqが増加した。CqはMPPC内のトレースの拡大によってさらに増加することが明らかになった。これら二つの変化による影響は、実際にオシロスコープ上ですぐに観測された。ピーク振幅が増大し、減衰時間が短縮し、パルス波形の均一性が向上した。
全工程に対して精密化を実施すると、他にも改善が観測された。50μmピッチ、3×3mmのMPPCのダークカウントが平均して2分の1に減少した。このような改善によって、MPPCは冷却せずに室温で容易に使用できるようになった。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/08/1108feature04.pdf