高分子オパールファイバの延伸による構造色の同調

クリス・フィンレイソン、デイビッド・スノスウェル、ピーター・スパーン、ジェレミー・バウムバーグ

自己集合したサブミクロンのコアシェル粒子を含有する高分子オパール結晶ファイバは延伸同調色を示す。機械的ロバスト性をもつこれらのファイバは工業的に拡張可能な押出し加工を用いて作製できる。

オパール型のフォトニック結晶には規則的な配置で充填されたサブ波長の径をもつ微小球が含まれる。現在はサブミクロンのコアシェル粒子の自己集合にもとづいて構造色を示す高分子オパールファイバの製造が可能になっている。これらのファイバは内部の下部構造に特徴があり、とくに強い構造色は露出した表面近傍の同心部に現れることが理論と実験の両方で証明されている。これらのファイバは延伸により同調できる可視スペクトルを示し、強い構造色効果をもつため、新しいナノ材料や布地の有望な候補として、毒性のある染料や光劣化を示す染料を置き換えることができる。こうした高品質の高分子オパールファイバは、現在工業的に拡張可能な押出し加工を用いて作製できる(1)。

溶媒なしの製造

フレキシブルオパールを製造する低コストの技術はコアシェル高分子ナノ粒子の溶解とせん断力による秩序化を利用して開発された(2)~(4)。この技術は低欠陥フレキシブル高分子の面心立方(fcc)オパール膜を製造し、その前駆体ナノスフェアのサイズ、つまりfcc格子パラメータを200~350nmの範囲で変えることで、基本光共鳴周波数の可視から近赤外領域にわたる同調が可能になる。このような高分子オパールは他の自己集合コロイド系からは得られない利点があり、機械的なロバスト性をもつ永続性固体構造を溶媒なしで形成できる。
 この高分子複合材料は屈折率コントラストが低いと、ブラッグ回折による通常の玉虫色反射とは反対に、その発色は3D fcc格子フォトニック結晶内部のスペクトル共鳴から生じる(5)。これは鉱物や生体組織などの自然オパール系材料の構造色と玉虫色の起源の理解にとって欠かせない原理にもとづいている。また、エラストマ高分子オパールの最も魅力的な特徴の一つは、(111)面の間隔を曲げや延伸を用いて変化させたときに生じる色の可変同調性にある(6)。このような性質からはオパールファイバの精密な紡糸や押出成形が可能になり、その強い構造色効果は生地などの材料に含まれる毒性または光劣化性の染料を置き換えることができる。高分子オパール膜の場合、構造秩序化は外側平坦面から始まり、(111)面の累積が起こる(7)。しかし、最近の研究では、ワイヤ構造のオパールファイバが押出成形により製造できることも明らかにされている。
 この新しい製造技術は高分子粒子のずれ流動による自己集合化を用いる高温の押出成形法を使用して、高分子粒子を3D fcc格子に導入する。コアシェル粒子前駆体は200 ~300nmの径をもち、硬質ポリスチレン(PS)コアが薄い軟質ポリエチルアクリラート(PEA)シェルで被覆されている(図1)。これらの粒子は多段乳化重合法を用いて作製される。この材料は小型の押出成形機を使用して加工される。この成形機は二つの対向回転金属スクリューで構成され、速度は毎分1~150m、温度は25~250℃で調整可能である。オパール前駆体材料のバルク原料は人手を用いて成形機に導入され、スクリュー回転の強力なせん断力により溶解して均質になる。次に、発生した過度の圧力がせん断秩序化粒状物を細い口径のステンレス製の口金から押出し、細いオパール繊維が製造される。

図1

図1 ポリスチレン(PS)‐ポリエチルアクリラート(PEA)にもとづくコアシェル(CS)系(a)は高分子オパールの製造に使われる。薄いグラフト中間層にはアリルメタアクリラート(ALMA)が含まれる。合成直後のCS粒子(b)原料は押出成形されて、オパール品質の薄いフィルム(c)または長いファイバ(d)になる。架橋したファイバは織物(e)に加工され、延伸による強い可変構造色効果を示す(f)。(資料提供:ジェレミー・バウムバーグ氏)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/08/1108feature02.pdf