プリント基板上に作られるスローライト

特別に調整された分散プロファイルによって材料内の光の群速度が大幅に落ちる、いわゆる「スローライト」の発生は、通信や光データ処理用途の光回路に利用できる可能性がある。スローライトの発生は、当初、一般に複雑で精巧な実験装置が必要とされる電磁誘導透過を利用して実現されたが、その後、光ファイバと集積フォトニックチップ内の誘導ブリルアン散乱(SBS)およびラマン散乱(SRS)を用いて達成された。
 現在では、ロシアと米国の科学者グループが、通常のプリント回路基板(PCB)のポリマ導波路内にスローライトを発生させ、この効果を利用できる可能性を広げた(1)。この装置では、多くの用途に有用な、広い範囲でチューナブルな光学遅延を発生させるためにSBSが使用された。

SBS誘導スローライト

ロシアのM・V・ロモノーソフ記念モスクワ国立総合大学(モスクワ大学)とロシア科学アカデミー、および米テキサスA&M大学の研究グループは、一つのPCB上に紫外線(UV)リソグラフィを用いて、長さが等しく5cmの50×50μm導波路のアレイを作製した。導波路のコアとクラッドの屈折率は、800nmでそれぞれ1.46と1.40で、ラマン利得スペクトルは11フェムト秒(fs)の振動周期に対応する約3000-1の波数をもつ炭素-水素振動モードによって支配されている。
 ストークスパルスは、40fsパルスを発振するモードロックマスタ発振器と、中心波長800nm/標準帯域幅5nmで60fsパルスを発振するマルチパス増幅器を内蔵するTi:サファイアレーザシステムによって作り出された。また、持続時間100fs/中心波長650nmの励起パルスは、周波数可変の光パラメトリック発振器によって作られた。他のSBS誘導スローライト装置と同様に、励起パルスはストークスパルスを増幅し、導波路の屈折率を変化させ、ストークスパルスの速度を下げる。このストークスパルスの持続時間は、実験では60~500fsの間で変化した。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/08/1108wn02.pdf