デジタルサイネージの次に来るものは?

ゲイル・オーヴァートン

ノートパソコン、携帯電話、テレビなど多くの個人向けディスプレイ技術が十分に成熟した現在、超大型ディスプレイとデジタルサイネージがディスプレイ産業の中で最も目覚ましく成長すると見込まれる。

韓国のLGディスプレイ社(LG Display)によれば、多くの情報技術とテレビジョンディスプレイ産業部門が成熟に達したので、広告と情報伝達を狙ったあらゆる電子ディスプレイを包括するデジタルサイネージが、ディスプレイ産業のなかで最も目覚しく成長するであろうことが予測される(1)。LGディスプレイ社と他のディスプレイメーカーは、より大きく、より良いビューイング体験、あるいは消費者を「サプラ
イズ」させ、注目させる新しい機能をもつ新型デジタルサイネージ技術を、連日のように市場に投入している。

より大型に、より高品位に

米テキサス州ダラスのカウボーイスタジアムで行われた第45回スーパーボウルで、フットボールファンたちは、当時、おそらく世界最大であった高精細度テレビ(HDTV)のスクリーンを見て熱狂したことであろう。三菱電機製の幅160フィート、高さ72フィート、重さ600トンのスクリーンの驚異的な点は1050万個の発光ダイオード(LED)を使って、非常に明るく、途方もなく大きなビューイング体験を創出していることだ。2009年に設置された、このダイアモンドビジョンLEDスクリーンはユニークな「クァッドドットパターン」技術を使って、一連のLEDに対してではなく、各カラー LEDに対してピクセル/シェーダを配置することによって色ずれを回避している(図1)。しかし信じがたいことだが、2011 年5月に、さらに大きな、幅200フィート、高さ80フィートのHDTVスクリーンがシャーロット・モータ・スピードウェイに登場する予定だ。このディスプレイはパナソニックによって組み立てられたもので、900万個のLEDが使用されている。
 1フィート平方のタイルから組み立てた6×8フィートのセクションをさらに集合させた超大型LEDからなるスタジアムや高層ビル用のディスプレイとは異なり、中程度の広告を主な用途としたディスプレイは、薄膜トランジスタ‐液晶ディスプレイ(TFT LCD)、プラズマ、有機EL(OLED)などと多様である。現在製造されている最大のフラットパネルディスプレイガラス基板、いわゆる第10世代のガラスは約9×10フィートに達するため、このような中型の消費者向けディスプレイは、1台の第10世代パネル内にある15個の個別42インチディスプレイのように、いくつかに分割して製造されることが多い。連続または一枚ガラスで最大のものはシャープによって製造された対角線サイズが108インチのディスプレイである。
 しかし、これらのガラスで作製できるものよりさらに大きなディスプレイを望むのであれば、ディスプレイプロバイダは小さなディスプレイを貼り合わせて大型のものを製造しなければならない。これらの「貼り合わせ」ディスプレイで高いビューイング体験を実現するために、メーカーはディスプレイユニット間の「ベゼル」つまり分離境界線を狭くする努力を続けている。2011年3月に、LGディスプレイ社は、9台の37インチディスプレイから 1台の111インチディスプレイを作製するために、個々のディスプレイ(左/右1.5mmとトップ/ボトム2.5mm)を分離するベゼルが最大で4mmと、業界で最狭ベゼルのディスプレイのプロトタイプを発表した(図2)。
 デジタルサイネージは屋内よりもむしろ屋外に設置されることが多いため、メーカーはさまざまな環境条件でより良いビューイングが得られるように、ディスプレイ技術をさらに改善する研究を続けている。例えば、多くのLCDスクリーンは表面温度が75℃以上になると黒ずみが出始めるが、30℃(86°F)の大気温度でディスプレイの表面温度が瞬く間に85℃まで上昇することも容易に想定される。ちょうど、水が沸点と凝固点を持つように、液晶はそのネマチックな機能状態から非機能の等方状態へと転移する温度よりも上でも下でも最適には動作しない。しかし、LGディスプレイ社は、これらのパネルが冷却または追加の電気を要することなく屋外向けディスプレイとして利用できるように、表面温度が-30℃(-22°F)から110℃(+230°F)の間での黒ずみを回避する独自の高輝度(2000cd/m2)LCDスクリーンを開発した。
 米オプトレックス・アメリカ社(Optrex America)は、伝統的なねじれネマチック(TN)LCDに比べて優れたビューイング体験を「広角ビューイング」機能によって実現した。オプトレックス・アメリカ社マーケティング・マネージャのジェシカ・ヒー氏(Jessica He)は、「伝統的なTNタイプのディスプレイでは、垂直な角度からはずれると色ずれが生じるであろう。デジタルサイネージで広告を表示する時には、ディスプレイはイメージの真の色を伝えなければならない。赤は桃色がかった赤ではなく赤でなければならず、青は緑がかった青ではなく青でなければならない。このことは、効率良く商品販売を促進するために真の色を伝えなければならない広告では特に重要だ」と語っている。

図1

図1 ダイアモンドビジョンLEDディスプレイ社は、超大型ディスプレイの性能の向上を狙って2つの光学的革新技術を採用している。「クァッドドットパターン」技術(a)では、カラー画素は4つのドット、つまり2つの赤、1つの緑、1つの青からなり、ビューイング解像度を高めるためにスクリーンプロセッサが隣接画素間のドットを共有して「動的な」画素を生成することができるように配置されている。各カラー LEDに対して配置された個々のシェーダ(b)は、色外観をラジカルに変える1群の全LEDカラーを覆い隠すマルチシェーディングアーキテクチャとは異なり、斜め角ビューイング時に真の色を伝える。(資料提供:三菱電機)

図2

図2  超大型ディスプレイは一般に個々のディスプレイの「貼り合わせ」である。この111インチのディスプレイは 9台の37インチディスプレイから構成され、報告された最狭ベゼル(境界)幅はちょうど4mmである。(資料提供:LGディスプレイ)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/07/1107applied.pdf