DUVエキシマレーザシステムを改善するフッ化カルシウム微小光学
新しいエッチング技術を使って回折型/屈折型のフッ化カルシウム(CaF2)微小光学系を製造することにより、深紫外(DUV)エキシマレーザシステムの寿命を延長し、補修時間を短縮することが可能である。
紫外(UV)フォトニクスの世界のシステムエンジニアは、この業界におけるいくつかの複雑な問題を解決するために微小光学に注目している。回折光学素子(DOE)やマイクロレンズアレイ(MLA)、より一般的な屈折光学素子(ROE)ならびにこれらのハイブリッドなどの、微小光学コンポーネントまたはアレイ光学系によって、材料加工のためのビーム成形、照明や半導体計測に必要なパターン生成など、多数のアプリケーションが実現される。
材料選択はあらゆるフォトニクスアプリケーションにおける重大な決定の1つである。レーザ関連では、材料の仕様が、システム寿命、安定性、コストを左右する最も重要な要素になるだろう。経験則によれば、波長が短くなるにつれ、より特殊な材料が必要になるということだが、フッ化カルシウム(CaF2)はこのスペクトル領域で最適な材料の1つである。CaF2は機械加工または成形が非常に困難な材料として知られているが、CaF2に適した最先端処理技術も存在する。
CaF2 材料特性
フッ化カルシウムは多数の有用な性質を持っている。DUV領域における透明性が高いことに加えて、DUV領域での寿命安定性に優れ、損傷しきい値もかなり高いため、この波長領域のエキシマシステム用として最適な材料である。さらに、CaF2は140nmから7.5μm以上の広い透過範囲をもつ。フッ化カルシウムは有機化学物質とフッ化水素酸をはじめとする多数の酸に対して不活性で、ドライ環境で1000℃まで使用可能である。
CaF2は、屈折率が比較的低い(193nmで1.5016、248nmで1.4680)ため、いかなる薄膜コーティングもせずに約193nmアプリケーションに利用することができる。もし薄膜コーティングを適用したとすれば、コーティングの材料選択とプロセスがその光学系の寿命を決定するであろう。酸化物またはフッ化物ベースのコーティング材料の選択は挑戦的な193nmCaF2アプリケーションの性能を変える可能性がある。
応力は考慮しなけれならないもう1つの性質である。CaF2の結晶性により、結晶面内の不均衡な応力は複屈折を増大させ、加工中のパーツの破砕や破壊の原因にさえなる。それゆえ、製造中に材料の応力を増大させるいかなるステップも回避しなければならない。
CaF2 微小光学の製造
10年以上前に、微小光学は穴あけや精密加工などの355nmレーザ材料加工アプリケーションに導入された。これらのコンポーネントは一般に石英ガラスまたは石英結晶から製造され、これらの材料の透過窓は、より長いUV波長を利用するアプリケーションに対しても十分である。しかし、レーザがさらに高出力、高効率になると、より適切な材料が必要になる。ハイエンドな(または高出力の)UVアプリケーションで長時間使用すると劣化を起こすとはいえ、溶融石英は今まで、ほぼすべてのDUVアプリケーションに最適な材料であった。溶融石英の圧密またはマイクロチャネリング過程において、193nm波長で高いUVエネルギーに曝すと、時間の経過に伴ってバルク材料の密度と屈折率が変化した。屈折率の変化は透明溶融石英の波面特性を変える。幸いなことに、CaF2はこのような特性を示さない。しかし、これらの回折型と屈折型の微細構造をCaF2上に作製することは既存の技術では困難であり、円筒断面または直線構造に制限されてきた。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/07/1107feature04.pdf