200Hzの狭線幅レーザダイオードを実現するWGM微小共振器

コヒーレンス長の非常に長いレーザは、ライダ、光通信、干渉測定、モニタリングスマート構造、中赤外(MIR)における生体分子センシングなど、多数の用途を有する。長いコヒーレンス長に必要な狭いスペクトル線幅を達成しようとすると複雑で高価なレーザが必要になるが、半導体レーザ設計と組合せると、複雑さとサイズを多少軽減することができる。つい最近、米オー・イー・ウエイブズ社のエンジニアたちは、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)微小共振器で安定化させたサブキロヘルツの線幅をもつ、小型/頑丈で、製品価値の高い半導体レーザを開発した。
 標準的なバタフライパッケージに組込まれ、光ファイバ(シングルモードまたは偏波保持シングルモード)ピグテールをもつ3mWの生産モデルは共鳴光フィードバックによってHigh-Q WGM共振器に結合させた商用レーザダイオード(LD)である。標準波長は通信波長のCバンドとLバンド(いずれも1550nm領域)であるが、この設計自身は非常に多用途であり、これよりはるかに長波長のMIR半導体光源を利用することによって、309~2900nm範囲の波長の狭線幅レーザの作製に利用することができる。

表面レイリー後方散乱

このWGM共振器はフッ化カルシウム(CaF2)でできているが(図1)(1)、フッ化マグネシウムをの利用も可能である。分布帰還型(DFB)半導体レーザは、プリズムを介して直径2mmの微小共振器に結合されている。この共振器のQ値は無負荷時で約2×109であり、プリズム結合によって約1×109へと変化した。共振器へのレーザの結合は共振器内の表面レイリー後方散乱の結果としての注入同期によって実現した。

図1

図1  CaF2でできた結晶WGM微小共振器は無負荷時の Q因子は2×10 9。その極めて高い Qによって大きな表面レイリー後方散乱(他の場所での損失を低くすれば、さらに大きなレイリー散乱になる)が起こり、共振器のDFB半導体レーザへの結合が可能になる。その結果、レーザ線幅は200Hz以下まで狭まった。(写真は当初 “Crystalline resonators add propertiesto photonic devices,” Vladimir S. Ilchenko,Anatoliy A. Savchenkov, Andrey B. Matsko, David Seidel, and Lute Maleki, authors;SPIE Newsroom, Feb. 17, 2010; doi: 10.1117/2.1201002.002536に掲載された。)

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/06/1106wn01.pdf