光を吸収するエール大学の「反レーザ」

昨年の夏、米エール大学応用物理学教授のA・ダグラス・ストーン氏率いる研究チームは反レーザ、すなわち特定の周波数の光を放射するのではなく逆に吸収するレーザの基礎にある概念を説明する研究を発表した(1)。その後1年も経たない内に、研究チームは、彼らがコヒーレント完全吸収体(CPA)と名づけた、機能する反レーザの製造に成功した。
 ストーン氏の理論チームと密接な協力関係の下でCPAを実現した実験チームを率いるエール大学応用物理学教授のホイ・カオ氏は、「われわれの結果は一定波長をほぼ完全に増強するか、あるいは完全に抑制するかのいずれかにコントロールされた光を実現する新しいアプローチを提案した(2)。この技術は、スイッチ、変調器、検出器などより小型な集積シリコン(Si)デバイス、生物学もしくは化学センシング用途における特定波長でのフィルタリングまたは雑音抑制デバイス、ことによると選択的光線療法または熱実験における生物学的組織や他の媒質におけるレーザ光の必要に応じた吸収など、いくつかのアプリケーションを予示している。もちろん、これらの反レーザのアプリケーションは、それらの影響力が適切に評価される前に、多くの開発が必要になるであろう」と語っている。

「損失」媒質

時間反転対称は、古典電磁気学と非相対論的量子力学における基本的対称性であるため、それはレーザ放射の時間反転類似物が存在することを示唆している。反転分布とコヒーレントレーザ放射を創り出すために励起光源をレーザキャビティ内の利得媒質に適用する代わりに、エール大学の研究チームは、利得媒質を入射するコヒーレントレーザビームを完全に吸収し得る「損失媒質」に置き換えた。このCPAは、入射光の周波数とフィールドパタンが正確に時間反転された放射パタンと一致することを要求する。一致しない場合には、吸収は減ることになる。
 この時間反転レーザ発振を最も簡単に実現するのは、一端に反射鏡を配置し、他端に一つの入力チャンネルを配置した非対称キャビティによって形成される単一チャンネルCPAである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/06/1106wn03.pdf