空気中に形成される「後方伝搬レーザ」

ガス漏れ、爆発、有害化学物質などの遠隔検出をこれまで以上に容易にするにはどうしたら良いのだろうか? 測定する遠方の空気中に何とかしてレーザを形成することが一つの方法になり得る。形成されるレーザの発光には必要な化学情報が含まれる。このことを米プリンストン大学と米テキサスA&M大学の研究チームが実証した(1)。
 彼らの「後方伝搬レーザ」はシンプルな発想、つまり化学反応の同時発生に基づいている。空気中の分子酸素を二つの原子状酸素に分離するために必要となる光の周波数はこれらの原子の原子遷移と非常に接近している。226nmの波長を放射するレーザビームを一般的な空気のどこかに集光すると、二つの異なる二光子吸収の機構を通して、二つのプロセスが起こり、空気中の酸素は845nm光のエミッタに変わる。
 このことは30年ほど前の火炎の分光研究によって知られていたが、原子状酸素はこのようなプロセスを引き起こす多数の化学種の一つでしかない。数年前、プリンストン大学のアーサー・ドガリウ氏らは、このプロセスを研究したときに、興味深い結果になることを発見した。ドガリウ氏は「われわれは火炎を研究していたときに、原子状酸素を励起する同じレーザが原子状酸素を生成することを発見し、火炎を取除いても、信号が発生することを観測た」と語っている。
 最近、彼のチームは、このアプローチに基づいて、845nmコヒーレント光を空気に照射すると、その焦点が原子状酸素レーザになり、レーザ光が励起レーザの伝搬方向ばかりでなく、後方にも伝搬することを見出した。この後方伝搬は決定的な意味をもっている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/05/LFWJ1105wn1.pdf