高出力を維持する低開口数のダイレクト半導体レーザ

デイビッド・ハヴリラ、マルコ・ホルツァー、スティーヴン・ストロマイヤー

従来の受動冷却ファイバ結合ダイオードモジュールは高パワーと高ビーム品質の組合せを実現できなかった。

従来の、ビーム品質が比較的低いファイバ伝送方式の半導体レーザ(「ダイレクト半導体」レーザ)は、約40%の優れたウォールプラグ効率を達成できるが、熱伝導溶接、蝋付けなどの表面処理加工への利用は限られていた。従来型の半導体レーザのビーム品質を約40mm*mradに改善すると、ダイレクト半導体システムのウォールプラグ効率は約32%へと低下する。
 ダイレクト半導体システムの効率の利点を生かし、そのビーム品質をさらに改善するために、独トルンプ社(TRUMPF)は新しい概念に基づいて、最大4kWの出力パワーが得られるファイバ伝送レーザを開発した。このレーザはファイバ結合半導体モジュールを使用して、従来は達成できなかった特性、つまり、わずか100μmの直径と0.12以下の開口数(NA)をもつ光ファイバから100Wのレーザ出力を実現している。
 ビームウエストサイズと同様、NAはビーム品質に直接関係する。一定のビームウェスト径では、ビームはNAが低いほど「集光」が強くなる。半導体レーザはNAが低くなると、焦点の直径が等しいときの作動距離と焦点深度が長くなり、作動距離が等しいときの焦点の直径は小さくなり、焦点の直径が等しいときの光学系は小型になる。
 トルンプ社の高出力直接半導体レーザ装置は複数のダイオードモジュールと1個のファイバ混合器から構成される。最大19個のモジュールの出力ビームは混合され、1本の出力ファイバに入り、1台の装置か1900Wのレーザ出力が発生する。19本のファイバはテーパ構造のファイババンドルへと融着接続され、その直径は個々のダイオードモジュールファイバの5倍になり、約500μmの直径をもつ出力ファイバへと加工される。ファイバ混合器は産業用のロバスト性が確保され、その光損失は無視できるほど小さい。
 このようにして複数のモジュールのそれぞれを組合せると、単一モジュールの効率は維持されるが、レーザ装置のビーム品質が悪くなる。個々のモジュールは約5mm*mradのビームパラメータ積(BPP)をもつが、19本のファイバを組合せたモジュールから成る装置のBPPは約30mm*mradへ増加する。

波長混合

複数の波長を結合すると1900W以上の出力パワーが得られる。全体システムは個々のレーザ装置のビーム品質を維持しながら、パワーを使用波長の本数倍に増やすことが可能になる。
 粗密度波長混合の技術はよく知られている。それぞれのレーザ装置からのレーザビームはファイバを通して伝送され、ファイバ出射端から出力される。ファイバコアから射出するレーザビームの広がりはBPPに基づく角度、つまりビームウエスト径とビーム発散角との積に依存する。ファイバ伝送レーザの場合、この値はファイバコア半径と射出半角との積に等しく、基本的にはファイバコア半径とNAとの積になる。従って、ファイバの直径が与えられると、ビーム品質はNAが低いほど高くなり、ビームの「集光能力」が向上する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/05/LFWJ1105-4f4.pdf