波長可変を可能した3D発光マイクロレーザ

スロベニアのヨーゼフ・ステファン研究所とリュブラナ大学の研究グループは、3次元(3D)の全方向レーザ発振色素ドープコレステリック液晶(CLC)微小液滴のマイクロレーザからの完全な波長可変レーザ発振を初めて実証した(1)。発振波長の同調はレーザ媒質の温度を変えて行われる。

半径方向ブラッグ共振器

今までのマイクロレーザ(または微小共振器レーザあるいはナノレーザ)は、ウィスパリングギャラリーモード設計を用いて形成されてきたが、3D波長可変レーザは等方性分散媒質に埋め込まれたCLC微小液滴(15〜50μmの直径)を用いて形成された。グリセロールなどの不混和性媒質中に小量のCLC混合物が分散すると、液滴は1秒以内に自然な自己集合を示した。
 CLC分子がCLC液体の中心から表面へ移動すると、CLCのカイラルティは分子の螺旋状ねじれを引き起こし、半径方向の強い屈折率変調が生じて、タマネギ状のブラッグ反射器が生成される(図1)。このタマネギ型の層状構造は完全な回転対称性をもつため、微小共振器には光を半径方向に放出するフォトニック(禁止)ギャップが形成される。光励起を行うと、CLC共振器内に分散した色素分子は光を放出し、光はブラッグ共振器から反射し中心に戻る。閾値を超えると、全方向へのレーザ発振が起こる。レーザ発振波長は共振器内部のCLC分子の螺旋ピッチだけに依存し、数十nmの波長帯でのチューニングが温度の変化だけで可能になる。今までのところ、3Dマイクロレーザによる波長可変レーザ発振は実証されていなかった。

図1

図1 CLCの微小液滴の内部に自己集合した螺旋液晶構造は屈折率コントラストをもつ同心シェルとなり、(a)に示すように、タマネギ型ブラッグ微小光共振器として知られる誘電体構造を示す。この3Dレーザは全方向に発光し(b)、レーザ発振媒質の温度を変えるだけで波長がチューニングできる。(資料提供:ヨーゼフ・ステファン研究所)

3Dレーザ発振と可変同調性

3Dマイクロレーザからの波長可変レーザ発振を実証するために、研究グループは二つの異なる色素ドープCLC溶液を調製し、それぞれに小量(1%ほど)のグリセロールを分散し、その十分に高い屈折率を利用して、低い屈折率のCLCから生じるウイスパリングギャラリーモードを抑圧した。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/04/58be338c4686f6f07ad7287b8d4bc0781.pdf