非線形ファイバに基づく斬新なデバイスを約束する半導体コアファイバ

ジョン・バラト、トーマス・ホーキンズ、ポール・フォイ、コリン・マックミリン、ロジャー・ストールン、ロバート・ライス

半導体コア光ファイバを使うと、長く、柔軟で、ロバストなファイバ導波路と、半導体平面導波路の非線形、ラマン、赤外透明性を一体化させることが可能になる。

結晶半導体コア光ファイバはまだほんの初期にあるが、それに対する関心は全世界的に高まりつつある。今のところIV族とIII-V半導体に集中しているが、このようなファイバを使えば、長く、柔軟で、ロバストなファイバ導波路の利点と、半導体平面導波路の非線形、ラマン、赤外(IR)透明性を合体させることが可能だ。
 溶融コア法を使って、われわれが初期製造に成功したガラスクラッド半導体光ファイバは結晶シリコン、ゲルマニウム、アンチモン化インジウムのコアを含む(図1)(1)〜(3)。溶融コア法では、半導体はクラッドガラス管の中に置かれる。このクラッドガラスは、ガラスがファイバへと線引きされる温度で半導体コアが融解するように選択される。本質的に、クラッドガラスは坩堝としての役割を果たし、ガラス坩堝が光ファイバへと直接線引きされるときに半導体メルトを閉じ込める。

図1

図1 線引きされ劈開されたガラスクラッド結晶半導体コア光ファイバの断面の電子顕微鏡写真—Si(a)、Ge(b)、アンチモン化インジウム(c)—は、これらのファイバの半導体コアとガラスクラッド間の界面が清浄であることを示している。

結果

概念実証研究の方がより便利であるが、われわれはシリコン(Si)コアファイバのクラッドとして石英ガラスを使い、ゲルマニウム(Ge)コアファイバには市販のアルカリホウケイ酸ガラスであるDURANを使用した。石英ガラスはSiの融点よりも高い約500Kで線引きした。コアの融点とクラッド線引き温度がより近い方が好ましいだろうが、石英ガラスは非常に強靭で、入手が容易であり、このコンセプトに適している。DURANはGeの融点に比してわずか60K程度高い温度で線引きするため、整合性はさらに良くなる。どちらの系でもコア内に酸素とクラッド成分が検出されたが、これはコアメルトにクラッドガラスが溶解した結果と考えられる。現在、これが制限因子になっているが、この相互作用を緩和するいくつかの取組みを進めている。
 結晶度と結晶学:すべての場合にすべての線引き条件の下で、半導体コアの結晶性は非常に高くなることを見出した(図2)。X線回折パタンが他の相を含まないことから、上記の酸化物はおそらく非晶質析出物として存在するのであろう。
 われわれは半導体結晶学の性質を調べた。特に興味ある基本的な問題は、ファイバ線引きに関連して決まる急冷速度において、これらの結晶コア光ファイバが非常に長い単結晶領域を含むか否かである。さらに、それらの結晶方位とファイバ軸との関係は何かである。これまでに研究された半導体光ファイバはいずれもその全長(数mから連続200mの範囲)を通して多結晶であったが、このファイバは局所的に単結晶領域を含んでいた。Geファイバの約85%は特定の結晶方位をもつ局所単結晶性であった。この方位は新しい結晶方位が出現するまでの最高15mm の長さにわたって存続した。特に、毎秒1m台の線引き速度において顕著であった。ファイバ軸に対する半導体コアの結晶方位は、小さな角度オフセットが常に存在するため、低指数面が常に優勢であった(4) 。
光学的性質:石英ガラスクラッドSiコア光ファイバを通る1.3μm 波長と1.5μm 波長の伝送損失は約2.7dB/cmであったが、約3μmでは4.3dB/mの損失が測定された。この最新の光ファイバにおける主な外因性損失は溶融半導体がクラッドガラスを溶解することによって形成された非晶質酸化物微粒子による散乱と考えられる

図2

図2 これまでに製造された各種の半導体コア光ファイバのX線回折分析はコアの結晶性が高いことを明らかにした。括弧内の指数は所与の反射に関連する結晶方位を定義する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/04/64b6b1867fc8a73fc5778ba5164930f71.pdf