高い引っかき抵抗性をもつサファイアのARコーティング
サファイアは特別な材料である。非常に硬質であるという点だけではなく、0.2~5.5μmの波長の光を伝送し、この波長領域の境界を除くすべてにトランスペアレントで、熱をよく伝導する。しかし、サファイアには短所もある。まず、複屈折性結晶材料であるため、結果的に窓、ドーム、特定のレンズなど、この特性を許容できるアプリケーションでしか利用されていない。また、サファイアは高い屈折率をもつため、反射防止(AR)コーティングが必要となる。
サファイアが選択されることが多いが、強度も求められるいくつかのアプリケーションに対しては、サファイアと比較的軟質の一般的なARコーティングを組合せても、あまり意味をなさない。この問題に対応するため、独フラウンホーファー応用光学・精密機械工学研究所(IOF)は、プラスチック眼鏡レンズ用ARハードコーティングに通常用いられる設計に基づいたさまざまなハードコーティングを試験した(1)。材料と設計の詳細を変化させることによって、研究グループは引っかきに対して改善された抵抗性をもつハフニウム含有コーティングにたどり着いた。
低い実効屈折率
眼鏡のコーティング設計は、各層0.75λの多層スタックから成り、各スタックは二つの低屈折率層に挟まれた非常に狭い高屈折率層でできている。このサンドウィッチ構造によって、実効屈折率は低屈折率材料の屈折率よりも実質的に低いレベルに低下する。この多層スタックの上には、低屈折率材料の層に囲まれた高屈折率材料の薄い単層と厚い単層を含む全波スタックが乗っている。
このコーティングのいくつかのバージョンが試験された。その全てにおいて二酸化ケイ素(SiO2)が低屈折率材料として用いられ、高屈折率材料としては、ハフニウム(HfO2)、チタニウム(TiO2)、イットリウム(Y2O3)、ジルコニウム(ZrO2)といった酸化物のいずれかが用いられた。このコーティングは、プラズマイオン支援の蒸着法を用いて作製され、アルゴンイオン照射を使う成長過程で硬化される。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/04/c9b8cc0f7bd2f2add45cd014b724718f.pdf