従来のガス測定技術を革新する量子カスケードレーザ
量子カスケードレーザのイントラパルス特許技術を用いて設計された産業用測定機器は、耐久性と精度が高く、従来のガス測定技術を革新している。
量子カスケードレーザ(QCL)に対する関心が劇的に増大しているが、それはエンドユーザが従来の技術では不可能な測定法を期待しているからだ。相互干渉への耐性、応答速度の向上、ダイナミックレンジの拡大、測定精度の改善などが要因となり、QCLメーカーは有力な国際企業のユーザとも提携して、新しいQCL装置を開発している。
このビジネスチャンスを手にしたいと考えているQCLメーカーは、矛盾するさまざまなエンドユーザの要求を迅速に、かつ優れたコスト効果で満足させるためには、ロバストなガス測定器が必要だということに気付いている。これに対応するため、スコットランドのカスケードテクノロジーズ社(Cascade Technologies)は現場でのサービスとアップグレードが可能なモジュラ方式のQCL技術によるガス検出器を開発した。
産業用の装置
われわれの設計法では、QCLレーザを個別の光学モジュールに実装し、光学系への取付けと取外しを反復して行うことができる(図1)。各モジュールからの光はコリメーションされ、すべてが工場内でアラインメントされ固定されている。それぞれのモジュールにはレーザとガスの動作特性のデータベースが内蔵され、マザーボードによるインタロゲーションと制御ソフトウエアへの伝送が行われる。モジュールはいずれもサービス/修復/アップグレードの現場での無停止交換が容易であり、ソフトウエアの再調整や再構成を行わなくても、連続動作を実行できる。電子回路はいずれもIPC‐610標準に準拠して順列動作し、70℃の温度と高い湿度および振動環境における動作の信頼性が保証されている。
このモジュラ方式は光学系にも適用され、長い光路長(4〜100m)と短い光路長(0.1〜4m)の両方に使用できる二光路長ガスセルを含めた多数の異なる光学配置を使用できる。それぞれの光路はダイナミックレンジ改善の要求を満たすことができるように構成されている。高速ガス交換用の小容量(0.25l)のガスセルは、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)を被覆してガスの吸収効果を最小にし、200℃以上での動作も可能にしているため、多数の工業用プロセス用途に応用できる。一方で、ハードウエアは限定された用途での開放光路配置に合せて設定され、そこではレーザが測定現場や倉庫などの周辺に投影され、危険物質の漏れ検出に応用される。また、煙道の直接挿入式測定の用途にも使われる。この場合はレーザが煙道から排出されたガスの柱を通して直に投射され、発電所などの放出ガスの連続測定が行われる。
この単一チップ上多重QCLは、ガス測定用途向けの新しい光源の性能を向上させるためだけに開発された。この場合、単一かつ小型の全固体半導体光源からは、赤外の広い波長にわたり最大で50本の離散波長の単一モードレーザビームを得ることができる。それぞれの波長は個別に利用できるため、一般の狭帯域レーザ光源では測定できない大きな重分子や長鎖の炭化水素などをターゲットガスにした多数の産業用の測定が可能になる。
信頼性
ガス測定器メーカーはQCL自体の寿命と信頼性を最大の問題にしている。今日でも、研究用に販売されている多数のQCLデバイスは、取扱いの容易さだけを考慮して設計された銅帯のサブマウント上に実装されている。半導体チップとサブマウントの熱膨張差、フラックスを含むインジウム系はんだの使用、手動による取扱いから生じる複合汚染などによって、デバイス寿命は12ヶ月以下に制約される場合が多い。このように、QCLの倍頼性に問題があることは驚くべきことではない。
われわれは半導体メーカーと共同して、Telcordia標準をQCLの生産、マウントおよび実装に適用し、15年以上の平均故障時間(MTTF)値を達成した(図2)。この提携は実装技術の改善をもたらした。われわれはリン化インージウム(InP) レーザ基板と熱的整合性のある窒化アルミニウム(AIN)サブマウントを採用した。予備蒸着した金スズ (AuSn) 合金はんだを使用して280℃の硬質はんだ付けを行い、軟質はんだ付けの場合に起きやすい致命的なインジウムの移動を防止した。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/04/cbcf6f258a7e1fa1f5cb4088b90fedb81.pdf