マッハ10の気流を可視化する一酸化窒素PLIF
米国空軍のX-37Bなどの超音速航空機やスペースシャトルなどの宇宙船は、いずれも大気に再突入するときにマッハ25の超音速から亜音速への減速が行われる。本年初め、米国空軍のX-51A Waveriderは、そのスクラムジェットのパワーを使って、200秒にわたるマッハ6飛行を実現した。超音速気流現象を試験する一つの方法では、米航空宇宙局(NASA)のラングレー研究所にあるマッハ10風洞を使用する。しかし、超音速気流はさまざまな事象が最大数百kHzの周波数で発生するため、マッハ10の気流の可視化は容易なことではない。
米オハイオ州立大学、アイオワ州立大学、ジョンズ・ホプキンス大学およびラングレー研究所は共同して、絶対的な確実性をもつ平面レーザ誘起蛍光(PLIF)撮像法を考案し、従来のPLIFシステムの10Hzではなく、最大1MHzのフレーム速度の画像が得られるようにした(1)。
シートレーザ光
PLIF法はパルスレーザから形成されるレーザ光のシートを使用し、蛍光物質が注入された流れ媒質の断面を照射して、その蛍光画像をカメラで撮影する。レーザパルスは強いエネルギーが必要なため、パルスの繰返し率は低くなる。PLIFのフレーム速度を500kHz〜1MHzの範囲に増強するために、研究チームは高いパルスエネルギーが維持される高繰返し率レーザ開発の必要性に迫られた。
彼らは10〜20パルスから成るパルス列を所望のフレーム速度で生成するバーストモードレーザシステムを構築した。連続波半導体励起Nd:YAGリングレーザ発振器からの出力を可変パルス幅の閃光ランプ励起パルス増幅器の内部で予備増幅し、二重ポッケルスセルを用いて、その出力パルスをスライスし、バーストパルス列に成形した。次に、それぞれが10nsの持続時間と1nJのエネルギーをもつ波長1064nmの20〜30パルスから成るパルス列を構成し、6台以上の閃光ランプ増幅器を用いて、このバーストパルス列を増幅した。増幅後のバーストパルス列の各パルスは100mJのエネルギーが得られた。
エネルギーが高くなると、増幅器列内部の各バーストパルスの利得消耗は顕著になり、パルス間の利得はパルス間の高い繰返し率のために補充されず、高いパルスエネルギーの実現は困難になる。また、増幅された自然放出(ASE)はシステム性能に究極的な限界をもたらす。そこで、ASEを減少させるために、研究者たちは増幅器列の内部に誘導ブリルアン散乱位相共役鏡を配置した。
次に、1064nm出力の周波数2倍化と3倍化を行い、532nmと355nmの出力を生成した。355nm出力を注入シード光パラメトリック発振器(OPO)の励起光として使用し、OPOからの出力は355nm光との和周波数混合を行って、226nm近傍の可変波長出力を生成した。OPOに注入された外部共振器半導体レーザの出力はOPOの厳密な出力波長、すなわち827.456nmの波長の設定に使用された。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/03/13d27a2a7b421b0eb13fa2519b907769.pdf