プログラマブルになるファイバレーザ
分散素子と同期された電気光学変調器(EOM)との組合せによって、ファイバレーザは利得バンド内の全波長を放射することが可能になる。EOMと励起パワーの変調を連動させれば、完全にプログラマブルなファイバレーザが実現する。
適切にドープされた光ファイバは、より高エネルギーの光源で励起されると、一つの波長帯に対するレーザ利得媒質としての機能を果たす。しかし、標準的なドープファイバレーザはレーザ入力信号をそのオリジナルの波長で増幅するだけである。適切に同期されたEOMとともに分散素子を利用すれば、波長、パルス幅、パルス繰返し周波数を含むすべてのレーザパラメータをユーザが電子的に制御することが可能な完全にプログラマブルなファイバレーザが実現する。
ファイバレーザの発展
1960年に最初のレーザが実証されてから間もなく、イライアス・スニッツァ氏(Elias Snitzer)はレーザ媒質としてガラスを使って研究を開始し、1964年に最初のファイバレーザのデモンストレーションを行った。ファイバレーザはその後も発展を続け、1987年には、デイヴィッド・ペイン氏(David Payne)が最初のエルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)を発表した。最初のEDFAは長距離通信システムに配備され、ノード間の到達距離の延長と全ネットワーク経費の削減に寄与した。
ファイバレーザの進展はイッテルビウム(Yb)ドーピングの導入によってさらに続いた。1μm帯において、YbドープファイバレーザはEDFAに比べて高い電力変換効率と大きなパワーレベルを提供する高効率な利得媒質として機能する。現在、このようなファイバは産業、医用、高品質イメージングなどの用途に広く利用されているYbファイバ増幅器や高出力ファイバレーザのコアに使われている。
今や、ファイバ技術、光学部品設計、制御電子回路のさらなる進歩がファイバレーザをさらに主流へと押し上げている。これらのレーザは従来のレーザに比べて小型で頑丈であり、多数の例において、維持費が高く操作が複雑な従来型システムを置き換えることができた。ファイバレーザは小型で頑丈であるがゆえにさらに多くの新しいアプリケーションにも対応する余裕がある。
最新の技術革新によって、ナノ秒システムを超える品質と精度を持つピコ秒台の走査型パルスファイバレーザシステムが開発された。これらのピコ秒システムの一つはカナダのジニア・フォトニクス(Genia Photonics)社製のシンクロナイズドプログラマブルレーザ(SPL)である。これは、ターゲットで同期された出力パルスを発生する2台のピコ秒ファイバレーザシステムを統合することができる。
シンクロナイズドプログラマブル
SPLシステムはプログラマブル分散同調/能動モードロックレーザとファイバ利用のマスタ発振器パワー増幅器(MOPA)から成る。波長分割マルチプレクサ(WDM)カプラがこの二つのレーザ出力を単一ビームに統合する(図1)。プログラマブルファイバレーザ(PL)とMOPAは高速エレクトロニクスを使用してそれらの内部EOMを正確に設定されたピコ秒パルスで駆動する。同期化の基礎は各レーザのパルス発生器のトリガとなる多重信号を発生する斬新な低ジッタ関数発生器(FG)回路の内部にある。これらの信号は外部光学装置のどのような遅延も補償するように同調可能なため、両レーザからのパルスは確実にターゲットで同期される。FGも他の取得システムやイメージングシステムなどの機器をトリガするための外部信号が提供できるように拡張されている。この外部信号発生は、掃引サイクルの開始、各連続掃引の開始、各光パルスの発生、各波長の変化などの事象を指示する一連のトリガである。
異なる波長の同期パルスは空間的/時間的重なりが必要な非線形光学において決定的に重要になる。二つの独立した波長で重なりのあるレーザパルスを達成する能力はコヒーレント反ストークスラマン分光(CARS)や誘導ラマン分光(SRS)などの非線形イメージング用途に門戸を開く。空間的/時間的な重なりは一つのレーザをその波長範囲にわたって掃引するポンププローブ実験においても同様に重要である。時間に敏感なポンププローブ実験の場合、SPLのFGはパルス列における各交互パルスだけが同期して、平均出力は一定値を維持するように、遅延ディザリングを制御する。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/02/cd29ab3a4c8bb2e6372ad4bba9ef1393.pdf