パワーメータとエネルギーメータの選択法

ヴァレリー・C・コフィー

光のパワーおよびエネルギーは、センサの方式と利用可能な機器の詳細と、波長応答、ダイナミックレンジ、損傷閾値、最大繰返し率などの要求を理解して測定しなければならない。

パワーメータとエネルギーメータは光源の出力を測定する。これらの測定は蛍光のような低い光源からの発光と高エネルギーパルスレーザからの強い放射のいずれであっても、研究所、生産工場、現場などのさまざまな用途において必要になる。
 パワーメータとエネルギーメータは個別に利用できるが、同一の機器、つまりパワー・エネルギーメータ(PEM)としてまとめて分類され、汎用性の制御盤や表示盤が取付けられ、さまざまな方式の光ンサが内蔵されている。光パワーと光エネルギーのどちらの測定デバイスになるかはセンサの方式から決まり、それぞれワットとジュールで表示される。パワーメータはそれ自体で連続波( CW)光源または反復パルス光源を測定し、標準的なセンサは熱電対アレイまたはフォトダイオードから構成される。標準的なエネルギーメータは単一または繰返しパルスレーザを測定し、センサは熱電素子、熱電対アレイまたはフォトダイオードとパルスを測定する特別に設計された回路から構成されている。

システム構成

いくつかのメーカーは制御部と読取部からなるデバイス(または制御盤)のメータ部とセンサ部(検出器またはヘッドと呼ばれる)を個別に扱い、それらを組合せて「測定システム」を構成している。それらを合せてメータと呼ぶメーカーもある。いずれにしても、センサはキャリブレーションの情報を蓄積し、制御盤はセンサからの出力電流を測定し、それを出力データの較正チャートと参照して測定値を算出する。
 いくつかの制御盤は検出器とユーザ用インタフェースになり、表示が不要な場合はRS‐232またはUSB接続を通して、測定データをコンピュータに伝送する。測定データにはパワーの差、和、長さ、ログ値と1チャネル以上の減衰が一つになったグラフも含まれる。PEM制御盤の多くはデジタル方式だが、パワーのわずかな変動だけを測定する場合はアナログメータでも対応できる。
 センサは注意を要する部品だ。市場にはフォトダイオード、熱電、圧電の3 種類のセンサがある。米ソーラボ社(Thorlabs)のプロジェクトマネージャを務めるクリスチャン・ジョンズ氏(Christian Johns)によると、フォトダイオードセンサは異なるピーク波長範囲の応答性をもつシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)またはヒ化インジウムガリウム(InGaAs)を用いるフォトダイオードで構成されており、減光(ND )フィルタを使用して、光検出器に入射したパワーの線形動作を保証している。フォトダイオードは材料が同じでも、それぞれの感度は異なる波長曲線を持つ。感度はA/Wで測定され、センサがいかに効率よく入射光を電流に変換するかの尺度になる。高速応答時間をもつセンサは波長に対して敏感であり、小型で低パワーのレーザに対して最高の動作を示す。
 ジョンズ氏によると、熱電センサは入射光を熱エネルギーに変換してパワーまたはエネルギーを測定する。このセンサは186nm 近傍から10.6μmまでのスペクトル感度が平坦なため、多波長や多色の光の測定に適している。フォトダイオードも紫外(UV)から赤外(IR)までの波長を測定できるが、波長が異なると応答も異なるため、正しい測定値を得るためには、メータにレーザビームの波長を入力しなければならない。1800nm 以上の波長になると、熱電検出器が唯一の選択肢になる。熱電センサは高パワーレーザにも耐えられるが、レーザパワーの変動が非常に大きいと、平衡状態に達するには数秒
の時間が必要になる。熱電センサはフォトダイオードほど敏感ではなく、低いパワーレベルに対しては満足な動作が得られない。
 圧電エネルギーセンサは光パルスのエネルギーを電圧スパイクに変換して光パルスのエネルギーを測定する。圧電センサは広い波長範囲で応答するが、熱電センサほどのスペクトル平坦性は得られない。また、パルス光源だけに動作させ、センサを用いてパルスを「見る」には、最小限の帯域幅が必要になる。
 ジョンズ氏によると「今日の市場から入手できる多数のパワーメータとエネルギーメータは、これらの三つのセンサ方式が並立している(図1)。こうしたパワーセンサ付きの汎用制御盤の一つを使う場合には、適切な名称はパワーメータになるだろう。また、エネルギーセンサ付きのものを使うとしたら、それはエネルギーセンサになる」と語っている。

図1

図1 自由空間とファイバ系の用途に使われるソーラボ社のPM1OODパワーメータは、25以上の異なるパワーおよびエネルギーセンサとの互換性がある。このパワーメータは組合せるセンサに対応して、1OOpW~250Wの光パワーと3μJ~15Jのエネルギーを測定できる。新製品の超小型S150Cシリーズのファイバセンサを組合せると、PM1OODは野外や実験室での使用に理想的な小型で携帯可能なファイバパワーセンサになる。(資料提供:ソーラボ社)

どのセンサを選ぶか?

どの方式のセンサがパワー測定あるいはエネルギー測定に使われ、その測定はどの範囲になるかを理解することは重要だ。米スペクトラム・デイテクタ社(Spectrum Detector) の社長を経験し、先ごろカナダのジェンテックエレクトロオプティクス社(Gentec-EO)により買収されたジェンテックエレクトロオプティクスUSA社の社長を務めるドン・ドーリー氏(Don Dooley)は、「熱電対アレイ検出器を用いるパワー測定は大面積の測定に適している。損傷閾値が高いため、ミリワット~キロワットのレベルを測定できる。半導体のフォトダイオード検出器は小面積の測定に適している。感度が高いため、ピコワットからミリワットのパワーを測定できる」と語っている。
 これらの3種類の検出器はいずれもエネルギーを測定できる。熱電対アレイ検出器はミリ秒領域の単ーパルス測定とパルス当たり数Jの高エネルギービームの測定に適している。焦電検出器は短いパルス(fs~ms) と広いエネルギ一範囲(50nJ~数J)に対して最良の動作を示す。フォトダイオード検出器は、低エネルギー(fJ~μJ)の短パルス(fs~μs) を測定することができる。ドーリー氏は「重要な仕様の性能範囲は各モデルのプローブと機器に依存して大幅に異なる。事前に製品の専門家に相談することは良いことだ」と語っている。英レーザメット社(Lasermet)のマネージング・デイレクタを務めるポール・トーザー氏(Paul Tozer) によると、フォトダイオード検出器は光を均ーかつ正確に測定するために積分球を備えている場合がある。レーザメット社の積分球付きフォトダイオードヘッドは最低lμWまでの小さな光パワーを容易に測定でき、ビームを照射する小型ヘッドをフォトダイオード上に直接置くと、約1nWまでの測定が可能になる(図2) 。標準的な熱電ヘッドは1mWまでを測定できる。

図2

図2 レーザメット社のADM1000デジタルメータは、熱電ヘッドとフォトダイオードヘッドを組合せ、また積分球の取付けと取外しを行うことで、広い範囲の波長のパワーとエネルギーを測定できる。高速化した回路を取付けると、700ns以内の最終読取に対して10% 以内の応答が得られる。このハンドヘルド式のADM1000は400kHzまでのパルス波形を測定し表示できる。(資料提供:レーザメット社)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/01/66dc73d4c899ca7392f7f78f146efb3f.pdf