マルチスペクトルの要求に応える共通開口赤外線イメージングシステム
光学材料と製造技術の適切な選択は、非常に軽くて安定な共通開口イメージングシステムを可能にする。
従来の赤外線(IR)イメージングシステムは、入手可能な材料のタイプとコーティング能力が制限されていたため、一般に、それぞれ別個の光路をもつ多重光チャネルを使って電磁スペクトルをカバーしなければならなかった。つい最近、二つ以上のチャネルを単一光路の単一チャネルに統合したシステムが開発された。これらは、可視から中赤外(MIR)の範囲で光透過率が高い新規光学セラミック材料を使用している。現在では、広い波長範囲で高透過率が得られる材料が市販されているため、主要な光学部品メーカーはこれらの材料をマルチスペクトルシステムで使用する非球面、球面、プリズム、ドーム形(レンズ)などに加工できる。
共通開口システムの利点
二重チャネルシステムが共通開口レイアウト用に再設計されると、システム中の少なくとも1 枚のレンズは全波長を受け取ることになる。例えば、米ロッキード・マーティン社(Lockheed Martin)製のスナイパー照準ポッドは中間波前方監視IR(FLIR)イメージャ、デュアルモードレーザ照準器とトラッカー、そしてCCD-TVを内蔵している。この装置は可視からMIR をカバーする。従来式システムとは異なり、スナイパーの特徴は照準誤差を除去し、超音速でさえ画像安定性を確保できる共通開口にある。これまで2 〜3 必要だった装置をこの1装置で置き換えることが可能で、追加システムも必要ない(1)。その結果、スナイパーはより小型でより軽量なシステムになり、部品数、在庫品目数、管理部品番号が少ないため、コストも低く抑えられる。
材料の考察
フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、サファイア、硫化亜鉛、セレン化亜鉛などの広帯域光学結晶に加えて、新しい光学セラミック材料がIR光学系を設計するエンジニアに選択肢を提供している。現在、スピネル、アルミニウム酸窒化物(AlON)、セラミックYAGなどはすべて入手可能である。これらの材料は耐食性があり、硬度が非常に高く、耐熱性で非金属の無機固体である。光学セラミックは加熱時の膨張が光学ガラスに比べて小さく、そのことが極端な温度変化によって誘起されるシステムミスフォーカスの防止に役立つ(2)。
共通開口設計の透過率要求を満たしている材料は稀である。候補材料となるには、可視からMIRまでの光を透過しなければならない。選択された材料はセラミックAlON とスピネルと結晶サファイアである(図1)。これらの材料の透過率は、多少の変動はあるが、いずれも約5μm から低下が開始する。可視からMIRの全域にわたる高透過率が、これらの材料を共通開口システム用として理想的にしている。
耐久性は材料選択時に考察する重要な属性の一つである。硬質セラミックは過酷な環境に対して耐性があるため、特殊用途に望ましい。光学セラミックはその熱機械特性によって機械的に強いため、高速で反復される極端な温度変化にも耐えられる。例えば、光学ドームは熱衝撃、雨、砂侵食、高速度、航空機着陸の激しい衝撃などに曝されることがある。こうしたドームの製造に使用する光学材料は、システムの動作を遮断または負の影響を及ぽすことなくその部品を持ちこたえさせることが重要である。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/01/14c1708e16ca899512138f7903da495a.pdf