光照射による量子カスケードレーザの変調

中赤外(MIR)量子カスケードレーザ(QCL)の発振波長(光周波数)の高速変調はその並列なレーザサブバンドと単極性のため困難であり、自己加熱も発振波長の赤方偏移を引き起こすものの熱時定数がマイクロ秒台のため高速変調に利用できない。しかし、幸いにも、米スティーブンス工科大学、中国の重慶大学、カナダの国立研究機構で構成された研究チームによって、フロントファセットに近赤外(NIR)フェムト秒レーザを照射して、MIR QCLの高速波長変調を光学的に誘起する方法が開発された(1)。最高1.67GHzの周波数まで波長変調が実現され、QCLは環境センシングや自由空間光(FSO)通信用途にとっても一層魅力的になった。(Laser Focus World 2010年11月号p.51参照)。

光学的に誘起された変調

標準的なMIR QCLの波長変調は、超高速Ti:サファイアレーザをQCLのフロントファセットに垂直から30°傾けて(20μmスポットに絞って)照射することによって実現された。820nmのTi:サファイアレーザはパルス幅が100fsで、パルス繰返し周波数が83.3MHzである。変調時には、100fsパルス列その基本周波数83.3MHzから開始し、約10THzの高調波を含む広帯域の変調周波数源として動作した。
 このQCLは、7.6μmのピーク波長とコーティングのないファセットを含む2μm厚みのコア領域を持つ、標準的な35周期タイプのヒ化インジウムアルミニウム/ヒ化インジウムガリウム(In0.52Al0.48As/In0.53Ga0.47As)ファブリペローQCLであり、銅ヒートシンク上のエピサイドに搭載された。これを400mA、連続波(CW)モードで動作させた。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2011/01/2d571495e28b758c05e6f7b483e79311.pdf