レーザ直接構造化による低コスト3D集積回路の形成

ダグ・グリース

すでに確立されたレーザ直接構造化(LOS) 技術は、レーザ加工とメタライゼーションの工程を使用して、3次元成形インターコネクションデバイス(30-MID)用の電気回路を形成し、表面実装部品を射出成形プラスチック上に搭載可能にする。

より狭い空間により高い機能を形成することに対するニーズが、機械および電気の設計者に対して、その形成を可能にする革新的な技術の開発をうながしている。LDS技術は10年ほどの歴史をもつが、この新しい技術は携帯電話の集積アンテナが最大の用途であった。それ以外の分野への応用が始まったのはごく最近のことだ。
 LDSによる3D-MIDは、プラスチック成形部品を使用して作製され、部品の外面には回路パタンが形成される(図1)。この回路の形成では、まず独LPKF杜製レーザシステムを用いてパタンのアブレーションを行い、次にレーザがトレースした場所だけを選択的にめっきするメタライゼーションが施される。また、高熱可塑性プラスチックと標準のリフローはんだを用いることで、表面実装部品の搭載も可能になる。この方法による設計と作製は、部品の高密度化、デバイスの小型化、軽量化、組立時間の短縮および信頼性の向上に利点があり、医療、自動車、各種産業、軍用/防衛用などの市場における新しい応用のシステムコストの低減にも役立つ。

図1

図1 30-MIDは射出成形部品と電気回路パタンを組合せる。

3D 直接構造化

LDSは特殊な熱可塑性プラスチック化合物の射出成形された部品の加工から始まった。この熱可朔性プラスチックは、高分子マトリックスの全体に有機金属添加物が混合されている。この添加物は基本的に有機化合物コーティングでカプセル封止された金属粒子で構成されており、熱可朔性プラスチックの固有の性質を大きく変えることはない。液晶ポリマ(LCP) 、高熱ナイロン(PA6/6T) 、ポリフタルアミド(PPA) 、テレフタル酸ポリブチレン(PBT) 、PBT/PETおよびポリカーボネート/ABSプラスチックなどの広範囲の高分子系列を利用できる。
 部品はLPKF社製レーザシステムに取付けられ、表面活性化の準備が行われる(LPKF社はレーザを用いて成形部品上に回路パタンを形成する特許を保有している)。表面活性化を行う前に、レーザには設計者が作成したCADデータによるパタン書込みプログラムが人力される。これは「網掛け」と呼ばれ、十分に構造化された部品の作製には重要な工程になるが、それは回路の配線の配置によって、レーザがそれを追尾して走査するには、最適化したパタンのプログラム入力が必要になるためだ。
 回路パタンは16Wの半導体励起によるネオジム添加オルソバナジウム酸イットリウム(Nd:YVO4レーザを用いて形成される。音響光学Qスイッチは部品の均一活性化に重要な非常に高いパルス間の安定性(1.5%以上)が得られる。この1064nm光源は20~100kHzのパルス繰返し率をもち、レーザシステムは3Dビームの配送用の高速走査装置と光学z 軸を備えている。4.0m/sの最大走査速度において、65μmのビーム径からは回路パタンおよび次工程の準備のためのパッド位置が形成される。
 第1段のめっき加工からは、エッチングする材料に対してレーザパラメータが最適化されているか、それとも調整が必要になるかの情報が得られる。現在の利用可能なLDS射出成形品質の等級幅に基づいて、パワーは2.0~7.0Wの範囲に、周波数は40~1OOkHzの範囲に、速度は2.0~4.0m/sの範囲に設定される。それぞれの材料に対して、これらの三つのパラメータを適切に組合せた装置が推奨されている。しかしながら、網掛けパタンから最適エッチング表面が得られない場合は、三つのパラメータを調整することができる。
 レーザが射出成形部品の表面に接触すると、二つの異なる効果を伴う活性化が起こる。一つ目はレーザのエネルギーにより有機金属微粒子の有機コーティングが破壊され、金属微粒子が部品の表面に露出するという効果。二つ目は部品がレーザの軌跡に沿ってエッチングされ、メタライゼーションを受け入れるテクスチャ加工された表面トポロジーが形成される効呆である(図2) 。材料の種類とレーザの設定(主としてレーザ出力)に対応して、アブレーション効果に基づく非常に浅い溝(深さ1Oμm 以下)または非常に小さなリッジが形成される。レーザ照射を受けない有機金属表面は影響を受けないため、レーザが走査した場所だけが選択的にめっきされる部品が得られる。

図2

図2 レーザ直接構造化(LOS)は高分子材料をアブレーションして、金属コーティング用のテクスチャ表面を用意する。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/12/01e43c809a5af3995f8c40c2ec25ec4e.pdf