太陽光発電の効率を引き上げる新しい技術

ジェフ・ヘクト

太陽電池の性能は多年にわたり徐々に改善されてきた。現在の開発者たちは新しい設計と構造を探索し、エネルギー効率の大幅な向上を目指している。

クリーンでグリーンな電力の明るい将米性は、資本家と政府による太陽光発電の技術と設備への大型投資を誘発している。過去35年間に、太陽電池の光から電力へのエネルギー変換効率は着実に増加した(図1)。しかしながら、半導体エレクトロニクスに比べると、その進歩は緩慢であったと言わざるを得ない。例えば机の上のコンピュータは、1977年当時の最新技術であった1MHzのプロセッサと4KバイトRAMのApple IIから考えると、激しい競争を繰返し、現在ではその性能は値じがたいほど向上している。一方で、この33年間の単結晶シリコン太陽電池のエネルギー変換効率は、1977年の13%から現在の約28%へと、2倍に改善されたに過ぎない。現在の開発者たちは、新枇代の太陽電池の光起電力性能に関して、非常に高いレベルヘの改善が可能になると考えている。彼らの目標は、新しい光起電力材料の発見ではなく、既存の材料のエネルギー変換効率を増強する新しい技術の利用に重点が置かれている。その目標の一つは、安価な基板上に薄膜として蒸着することであり、大型太陽電池の低コスト生産を可能にする無機半導体薄膜の内部構造の精密化にある。もう一つの目標は、内部構造のマイクロ化とナノ化であり、光の捕集、変換および電力発生の効率を改善することにある。その他の開発についてはLaser Focus World Japan 8月号p.30に記載されている。

図1

図1 光を電気に変換する太陽光発電の効率は、NRELによる一覧表が示すように、1970年代の中頃から着実に改善されている。これらの測定は比較可能な条件下のソーラシミュレータを使用し、実験室レベルのデバイスに対して行われている。

CdTe効率の2倍化

無機半導体に基づく薄膜は大規模太陽光発電施設用の技術として支持されているが、それはガラスなどの安価な基板に蒸着可能であり、その結果、太陽電池パネルの材料コストが大幅に低減することによる。
 有機薄膜材料はテルル化カドミウム(CdTe) が最も大規模に使われている。米国立再生可能エネルギー研究所(NREL) は小さなCdTe 太陽電池を使用して、16.7%のエネルギー変換効率を実験室で達成したが、この太陽電池は高価な基板が必要であった。米コロラド州立大学のW·S・サンパス氏(W.S.Sampath) によると、ガラス上のCdTeを用いて実現される最高効率は13.8%になる。ガラスをスクライビングし、それぞれの太陽電池の直列接続に必要な電子同路を付加すると、変換効率は10~11%に減少する。
 本年6 月、米国立科学財団(NSF)はコロラド州立大学に対して、次世代太陽光発電の産業/大学共同研究センターの開設と運営に必要となる5年間で45万ドルの研究助成金の交付を決定し、サンパス氏がリーダに就任した。コロラド州立大学は米アバウンドソーラー社(Abound Solar) 、カナダの5Nプラス社(5N Plus) 、米ピルキントン・ノースアメリカ社(Pilkington North America)、米イオンエッジ社(Ion Edge) 、米MBI社の5社とチームを組んだ。この各社も、総計40 万ドルを5年間にわたって提供することになっている。サンパス氏は「20%、できれば30 %の変換効率を商用デバイスで達成することが目標になる」と語っている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/10/376a86c7f56084275e1d7889217af637.pdf