APDの感度を100GHz以上に増強するSi電荷アバランシェ
容易に利用できるゲルマニウム(Ge)とシリコン(Si)のIV族の材料から作製されたCMOS適合導波路集積型アバランシェフォトダイオード(APD)は105GHzの利得帯域幅積が得られ、Ge/Si APDの用途を広帯域幅チップ閻相互接続と高密度光ファイバ通信にまで広げる。
Siフォトニクスの開発には既存の相補性金属酸化物半導体(CMOS)技術との互換性が期待されている。このことが光部品の関係者の関心を高め、その開発を加速している。高感度の光検出器が注日を集めるのは、高性能光計算、データ通伯、民生用エレクトロニクス、医療診断などの用途に対する潜在的効果が大きいためだ。
最近、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)マイクロエレクトロニクス研究所の探索研究チームは、IV族のゲGeおよびSi材料から作製した導波路集積型APDの設計と実証を報告した(図
1)(1)。従米のAPD はリン化インジウム(InP)のような周期律表のIII-V族元素からなる高価で希少の新規複合材料を用いて作製されてきた。標準的なInPAPDは生産コストが高いばかりでなく、データ速度がlOGbps を超えると利得帯域幅積が制約され、感度が劣化することも問題であった。よく知られた半導体材料のSiは、過剰雑音に対する感度が低く、Si系のAPDはInP系のAPD に比べると、感度が3dB以上も改善される。ここで言う感度とは入射する最小の光信号を低いビット誤り率のままで電気信号に変換する検出器の効率を意味している。
われわれの導波路集積型APD は、高感度ばかりでなく、CMOSプロセスヘの適合性もあるため、コスト効果のある量産を行うことができる。CMOS技術は能動および受動フォトニック部品をモノリシック集積できるため、光通信や高度な光演算の信号処理を単ーチップのプラットホーム上でまとめて行う将来のマイクロプロセッサアーキテクチャの技術としても適している。導波路を集積すると、より長波長の通信を行うときの光吸収が改善される。その結果、Ge/Si APDはより広い帯域幅を必要とするさまざまな応用が可能になる。
なぜIV族材料を使うのか?
従米のIII-V半導体化合物の代わりにIV族半導体を使用するAPDの作製は、光部品の贔産による経済性の確保に役立つ。Geの重要性は近赤外(NIR)の入射光の検出し、その光信号を後段の処理に適した電気信号に符号化する能力が高いことにある。各種のIV族の元素とIII-V 族の化合物の光学的性質を比較すると、Geの高い吸収係数は1.3μmと1.55μm との間の標準の通信波長帯の光倍号の検出に適している(図2)。また、Siは材料特性が本質的に優れているため、既存のIII-V化合物に比べると、高い増倍利得を低い過剰雑音のもとで確保できる理想的な選択材料になる。さらに、IV族の材料は既存のCMOSプロセス技術を利用できるため、大量生産によるコスト低減も約束される。
技術上の障壁の克服
IV族の材料(とくにGe)の使用には技術上の障壁がないわけではない。その大きな課題の一つは、Si上に高品質で高純度のGe膜を成長させることである。SiとGeでできたヘテロ構造の格子不整合は大きいため、格子不整合による約4.2 %の格子歪からは二つの大きな問題が生じる。第1 にGe/Si界面の近傍には貰通転位が高密度で発生し、第2 に表面は3 次元(3D)ストランスキー・クラスタノフ(SK)成長によって粗いモルフォロジーになる。これらの欠陥からは高い漏れ電流が発生し、光検出器の効率が低下する。
これらの問題を解決するために、文献では二つの異なる戦略が提案されている。一つは直感的アプローチであり、SiGe層の化学組成を傾斜構造にして、一端のGeを100%の濃度にする。オー氏らは低エネルギープラズマ増強化学蒸着法を使用して、Geモル分率の10%ごとの増加には約1μm厚の線形傾斜SiGeバッファ層が必要になることを明らかにした(2)。その結果、低い転位密度のGe膜を蒸着するには、10μm厚の比較的厚いSiGeバッファ層の成長が必要になったが、残念なことに、そのプロセスの統合には問題があった。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/10/0feef71ff1c985205afff737ac1289ce.pdf