赤外光学薄膜を詳細に分析できる偏光解析法
新しいIR分光偏光解析装置とデータ解析ソフトウエアを利用すると、基板および薄膜試料の膜厚と光学的性質の高精度で再現性のある測定が可能になる。
赤外(IR)光学の応用の拡大にともなって、レンズやミラーを含めた各種の光学部品はIRの光学的性質を精密に測定する必要性が増大している。新しいIR分光偏光解析(SE) 装置および関連するデータ解析ソフトウエアを利用すると、単層膜、多層膜および基板を試料にして、1.7~33μm(300~5000cm―1)の広いIR領域の光学的性質と膜厚の高精度で再現性のある測定が可能になる。偏光解析法は光が試料と相互作用するときの反射光または透過光の偏光状態の変化を測定する。従来から偏光状態の変化は次式の複素偏光測定方程式を用いて記述されている。
ここで、 は試料の複素フレネル係数を示している。最新式のIR偏光解析装置は偏光の透過と反射の強度データばかりでなく、偏光解消、非偏光解消異方性材料の一般的な偏光解析、偏光解消のある異方性材料のミューラー行列偏光解析などのデータも取得できる(1)、(2)。
ほとんどの中赤外(MIR) 分光偏光解析装置は、フーリエ変換(FT)IR分光計を光源とし、セレン化亜鉛(ZnSe)やKRS-5などのIR透明材料から作製したワイヤグリッド偏光子、集光とコリメーション用の放物面鏡および適切な検出器から構成されている。装置の多くは位相リターダ、すなわち「補償子」を内蔵している。すべてのIR-SE装置は、その偏光子およびその他の光学素子の大きな特殊性に基づいて、UV—可視—NIRのSE装置と区別される。IRSE装置は光学部品を注意深く選択し、システム較正を行うことで、UV—可視の偏光解析装置と同等の精度を得ることができる。
ここで例示するIR-SEデータ(および偏光の反射データ)は、いずれも1.7~30μmの波長範囲をもつ市販の回転補償子偏光解析装置(RCE)を用いて取得されている。RCE装置の重要な特徴はΔ(p-s偏光の位相差)がすべての可能な値(0°~360°) に対して正確に維持されることにある。その結果、薄膜と基板はMIR波長において透明になりやすいが、その場合でも誘電関数k(λ)は正確な値が得られる。
通常のデータ解析は光学モデルのパラメータを最適化し、光学モデルから発生するデータをΨ-Δスペクトルの指数関数に当てはめて行われる。このモデルは各層が特定の厚みと光学関数(n(λ)とk(λ)) をもつ一つ以上の層から構成される。厚みと光学関数のデー夕当てはめでは、X2またはその他の平均二乗誤差(MSE) が最小になる最適化が行われる。偏光解析法のソフトウ
エアを使用すると、ほとんど全ての薄膜や基板の組合せの高度な解析が可能になる。これらの組合せには、単層構造と多層構造、透明材料と不透明材料、等方性材料と異方性材料、屈折率分布をもつ層や不均一厚みをもつ試料などが含まれる。
材料の光学的性質は材料のバルクあるいは薄膜の形態によって変わる。また、材料の微細構造の性質、つまり単結晶、多結晶、非晶質のいずれであるかによっても変わる。結晶はサイズと相が異なり、非晶質材料は結晶方位が混在する。一般に非晶質材料は短距離秩序が異なる。多くの材料にはごく微贔の水素のようなn(λ) とk(λ) の変化の大きい元素が含まれている。これらのすべての性質は蒸着と加工の条件にも依存すると考えられる。
以下は偏光解析法による分析のいくつかの例を示している。赤外SE分析は各種の薄膜と基板の厚みおよびそれらの光学的性質を1回の測定で決めることができる。
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出典元
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