短パルスレーザが引き起こす空気中の凝縮
フェムト秒レーザは、それらが生み出した様々なエアロゾル効果に新たなトリックを追加するだろう。それらは雨を降らせることも可能かもしれない。欧州の研究チームは、空気中の短パルスレーザの集束によって生成されるフィラメントが空気中での水の自発的凝縮を引き起こすことを発見した。
短パルスレーザが生み出す多数の非線形効果の中でも、フィラメンテーションは特に見事だ。短パルスの自己集束は空気中の屈折率の非線形性によって起こる効果であり、パルスの鋭い集束によって局所電場が十分に高くなると空気自身がイオン化を起こし、そのイオンとそれらの電子が再結合して最高数百mの距離に広がるビーム伝搬方向に沿った「フィラメント」の束を形成する。
スイスのジュネーブ大学のジェローム・カスパリアン氏らの研究チームは、これらのフィラメントが空気から水の自発的凝縮を引き起こすことを発見した。カスパリアン氏も指摘するように、この凝縮効果はさほど新しいわけではない。ロード・ウィルソン氏は、100 年以上も前に、宇宙線が空気中を通過する時に空気をイオン化するため、宇宙線もほぽ同じ方法で凝縮を誘発できることを見出していた。
カスパリアン氏は、「高強度レーザは空気をイオン化するのだから、飽和大気中の凝縮を開始させることもできるはずだと推測した」と語っている。このことを試験するために、ジュネーブ大学、独ベルリン自由大学、仏リヨン大学の研究チームは、湿度と温度を制御できる「霧箱」を使った実験を行った。
最初のテスト:過飽和空気
研究チームは、霧箱内への負のスペクトルチャームによって800nm波長で220mJ、60fsパルスのlOHz 列を事前設定し、非線形相互作用によるビーム再集束によって20~30本のフィラメン卜束形成へと導いた。このチームは最初に飽和を超える230%の相対湿度と-24℃以下の温度を設定した。
カスパリアン氏は、「飽和空気で満たされたチェンバ内にレーザビームを投射した時に、いくつかの液滴発生に加えて、肉眼で見える程に大きな効果も発生したことに、非常に驚かされた」と語っている。
研究チームは、フィラメントによって誘起された液滴のサイズをエアロゾル粒度分析計で測定した。彼らは、液滴発展の最初の3 秒以内にビーム体積内の水の容積が100 倍に増大していることに気づいた。
これは注目すべき結果ではあるが、空気の過飽和条件ではおそらく驚くほどのことではないだろう。しかし、カスパリアン氏は、彼のチームは20~60℃の温度で、相対湿度が70~90%の空気中で同一の実験を試みてきたと言う。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/08/0758f346e46576afdfde6d4c55707736.pdf