従来の太陽光発電を超える太陽光の利用
フォトニクスと材料科学の進歩によって、研究者たちは、従来の太陽光発電技術に勝る新しい方式で太陽光を利用できるようになった。
この数十年間、結晶シリコン太陽電池は20%以上の変換効率で太陽光を電気に変換してきた。しかし、これと並行して材料やフォトニクスも進化し、研究者たちは、従来の太陽光発電を上回る太陽光エネルギーの変換が可能になった。彼らは、シリコンの限界を超えた太陽光収集効率の実現に向けて、最先端の薄膜材料、ガラスドーピング法、集光光学系を利用するだけではなく、太陽光パワーの新しい利用技術の開発も進めている。ある研究コンソーシアムは太陽光をその基本スペクトル成分に変えることによって50%の高効率太陽電池を実現した。建材一体型太陽電池(BIPV)は、板ガラスの窓を、照明器具としての機能も併せ持つ透明なソーラーパネルに置き換え、人工光合成を研究するチームは水素燃料発生に太場光パワーを選択している。
世代交代する太陽電池
太陽電池(PV)技術について考える時、大抵の人は、従来の平板型結晶シリコン太陽電池パネルを想い浮かべる。過去数十年にわたって、太陽光変換効率は20%を超える現在の水準を維持してきたが、これらの平板型シリコンPV に対して新しい競争相手が出現した。昨年、ドイツのハンブルグで開催されたEUPVSEC(European Photovoltaic Solar Energy Conference and Ex-hibition)では、様々な集光型太陽電池(CPV)アーキテクチャに加えて、超高効率太陽電池(VHESC; www.darpa.mil/sto/smallunitops/vhesc.html)プログラムの成果の一つとして、スペクトルソーティング集中太陽光に基づく変換効率36%以上のPV技術が報告された叫この新しいスペクトルソーティング法は非常に多くの研究チームの協同によって開発されたが、その報告は米デラウェア大学の主導のもと、厳密な試験が米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)と米アリゾナ州立大学の共著者によって行われた。VHESC 太陽電池はフッ化マグネシウム(MgF2)でコーティングされた口径30mm2の両凸集光レンズで太陽光を収集し、続いてダイクロイックビームスプリッタを使用して、870nmより短い波長を反射させてリン化ガリウムインジウム/ヒ化ガリウム(GainP/GaAs)検出器に送り、一方、870nm より長い波長の透過光をGainAsP /GainAs検出器に送る(図1)。集光はlmm2 検出器使用時で約30X になる。すでに、太陽電池効率の合計はVHESC 波長最適化検出スキームで42.7%に達した。
しかし、この超高効率と長寿命の可能性にもかかわらず、平板型は、CPVオプションも含めて、地面または屋根設置型の構造に限定される。幸いなことに、数十年の材料研究の結果、軽量で価格も抑えることができ、平板PV では対応できない新たな民生用途のオプションも得られる多くの薄膜PV 技術が可能になった。テルル化カドミウム(CdTe)とセレン化ガリウムジインジウム銅(CIGS)などの特殊な半導体材料で構成された薄膜PV 製品は20%に近い変換効率を実現しただけでなく、その製造法は、ロール・ツー・ロール方式や印刷方式の加工に適しており、柔軟で鋳造可能、もしくはスプレ一方式の太陽電池製品を促進している。例えば、米ソリンドラ社(Solyndra)の円筒状PVオプションは、水分の浸入を防ぐために外側ガラス管内にカプセル封止された内側ガラス管上に堆積された薄膜CIGS材料で構成されている。円筒の形状は1日中すべての角度からの太陽光を集め、角度埋込みや高価な追跡システムなしで光子の収集を増加させる。
薄膜分野においても、現在10%に近い効率を持つ低価格の有機または重合体に基づくPV 材料が存在する。もはや、PV 材料は単に地面または屋根上に設置されるだけではない。こうした材料は軽量で、繊維内に組込むことができ、BIPVを例にとると、屋根タイルなどの建築材料に成形することも可能だ。
米コナルカテクノロジーズ社(Konarka Technologies)の有機太陽電池(OPV)製品、いわゆるパワープラスチックは、屋内または屋外の光を直流電気に変換する。動作温度が-20℃~+65℃ 1Sun(完全屋外太陽光)条件における出力が3.9W または7.9V、指定寿命が3~5年であり、70x34cmの薄くてフレキシブルな携帯式充電器(電池または小さなエレクトロニクス用)などの太陽光収光製品に合体させることが可能なOEM製品として販売されている。これは光反応性の印刷が施された合計膜厚が0.5mmの高分子層、透明電極層、プラスチック基板、保護パッケージング層(いずれも再利用可能材料)から構成され、ロール・ツー・ロール加工によって最高60インチの幅でどのような長さにでも加工できる。2008年の米ナノマーケッツ社(NanoMarkets)のレポートによると、プラスチックソーラパネルは民生用および携帯用電子機器市場だけで2015年までに8000 万ドルの収益を生むと見込まれている。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/08/b5812346797c8006712c57ba7373eab7.pdf