異方性なしでは役に立たない透明マント

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、最近、一般的に用いられている設計法では、透明マント(不可視装置)を意図した通りに作ることはできないと断定した(1) 。
 理論的には、車、家、科学者自身などの物体を視野から完全に隠す光学式透明マントの設計は可能だが、現実的な考察によれば、これらの設計を構築することはほとんど不可能だ。そのようなマントは、おそらく、光の波長より小さな構造部品で構成され、それらのすべてがサブ波長の寸法精度で互いにアラインメントされた光学メタマテリアルから作られることになる。これを人間のサイズのマントで実現するのは神業に近い。さらに、大規模なメタマテリアルマントは光の部分的吸収と散乱が避けられず、その目的を果たすことはできないだろう。

事態の簡素化

そこで、クローキング設計者たちは二つの方法で事態を簡素化した。第1に、彼らは主としてサイズが数波長程度の非常に小さなマントに目を向けた。こうすればマントは作りやすくなる。第2に、彼らは、より単純な材料からマントを作ることができる特別なケースに関心を向けた。任意の複雑なクローキング配置は光学的に異方性のメタマテリアルを使川しなければならない。異方性メタマテリアルは、そこを通って伝搬する光の位相面が光の進行方向にたいして直角にならないように設計され、奇妙な性質を持つ。異方性メタマテリアルの構成は非常に困難だ。反対に、一定程度簡素化したクローキング配置であれば、異方性ではなく光学的に等方性のメタマテリアルあるいは傾斜屈折率誘電体を使用しても何とかなる。
 特別な事例の一つとして、研究チームは、任意の物体を隠すことを諦め、完全反射鏡上のバンプ(隆起部分)だけを隠そうと努力した。バンプは単純な形状で、高さが滑らかに変化し、完全反射率を持つことが条件になる。彼らは、反射鏡とバンプを外面が平坦で、願わくばバンプが見えなくなるような屈折率変化を持つ透明な等方性クローキング層で覆った。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/08/d8facba3f4a32ce3caf255183bee5cb4.pdf