先端分野の光計測に進出するPLC

アショク・バラクリシュナン、マット・ピアソン

PLCの設計、加工およびハイブリッド化の技術が進歩したことによって、レーザ、検出器、フェイズシフタなどのアクティブ部品や他の構成要素をPLCプラットフォーム上に直接集積できるようになった。

光計測器は一般に、光源、光信号処理用の各種光部品および光検出器から構成されている。従来の計測器の多くはバルク光学系を用いて作製されてきたため、小型化と高耐久化は非常に大きな挑戦であった。現在は平面光波回路(PLC) を使用することで、多数の光部品を1枚の光回路上に集積することが可能になり、計測器のサイズ、コスト、機能が改善されている。その結果、このような光チップに基づく光計測の応用が拡大している。
 PLCの最初の応用の一つは、複数の光信号を異なる波長で伝送する光通信ネットワークの信号の合波と分波であった。アレイ導波路回折格子(AWG)デバイスは、性能仕様の改善とともに、バルク回折格子への置き換えが徐々に進行した。光スプリッタの多くはデバイスのサイズが同じで、このことがコスト上の利点になっている。しかしながら、1980年代から2000年代の初めまでの時期において、バルク光学系からPLCへの置き換えが実現したのは、このような簡単で安価なデバイスにおいてであった。とは言いながら、長い間にわたって、PLCの小型化の利点を十分に生かせるのは多重チャネルヘの応用だとする仮説が通用してきたことは間違いない。

FTTHによる技術の進歩

2000年代の初めになると、PLCは分光法とファイバ・トゥ・ザ・ホーム(FTTH)の分野からいくつかの応用が生まれ、PCL の本来の応用は多重チャネルだとする従米の仮説を実証する機会が訪れた。例えば、FTTHチップは二つのチャネルしか利用しないが、光システムに対するフォトニックチップの革新的な効果が証明された。この場合の各チャネルは20~100nmの帯域幅があり、同じ導波路と光ファイバのなかを伝搬して双方向に動作する。このような要件を満たすために、高密度に実装されたPLCチップは波長分割多重器、レーザ、検出器およびその他の光部品が組込まれる。この応用は一見地味ではあったが、1枚のウエハから数百個、場合によっては数千個のデバイスが生産されるPLCは、競合するバルクデバイスに対して大幅なコストとサイズの低減を実現した。
 PLCのなかに波長分割やパワー分割の機能を組込むことは難しくない。しかし、先端的な光計測の用途ではさまざまな機能が要求される。導波路の設計者は長い期間をかけて、NxMスプリッタを含めた多数の董要な光部品を開発してきたが、これらのデバイスには、ウェハの工程変動に対して実質的に依存しない超低損失の後方反射ファイバ—導波路カプラを初めとして、パッシブデバイスの贔産において必要になる機能と構造が付与されている。

アクティブ部品のアラインメント

アクティブ機能もすべての光計測にとって、重要になる。レーザのハイブリッド化はFTTHの開始とともに始まり、今では大贔生産の工程においても非常に良好な光結合が実現されている。現在のレーザはPLC導波路とのパッシブ結合が可能になり、コンピュータビジョンとロボットを用いるレーザチップの完全自動組立技術を使用して、0.5dBに近い結合損失が得られている。この組立技術はレンズやアクティブアラインメントを必要としない。PLCウェハ加工プロセスの一部には、複雑だが再現性の高いフォトリソグラフィとエッチングの技術が確立され、ハイブリッド部品の高精度のアラインメントを可能にしている。
 PLC回路のなかの光はガラス導波路に閉じ込められて水平方向に伝搬する。この光と検出器を結合することは常に厳しい挑戦であった。この問題は光の出口になるPLCチップの端部と光検出器とを突き合せ方式で結合することが簡単なアプローチになる。このアプローチはたしかに機能するが、アクティブアラインメントが必須となり、実装が難しく、光電流の取出しには複雑なワイヤボンデイングが必要になる。そこで、われわれはPLC回路の内部にロバストなミラー構造をエッチングして作製する方法を考案した。この方法はミラー上のPLCに対して標準の表面受光検出器を集積する。光検出器の頭部には電気パッドを取付けて、標準のワイヤボンデイング用に使用する。このようにしてアバランシェ光検出器とPIN光検出器がPLCチップにハイブリッド化できるようにした。コンピュータビジョンとロボットによるチップの完全自動組立プロセスを用いることで、100%に近い歩留りと96%以上の抽出効率が得られている。
 偏光ビームスプリッタや光アイソレータなどの応用に特化した機能もPLCのなかに組込むことができる。前者は注意深いプロセス制御が必要になるが、いずれもPLCを光学ベンチとして利用する。このように、PLCは標準的な光学試験器の構成に必要となる機能の大部分を非常に小さな形状因子に基づいて提供できる。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/06/201006-7f1.pdf