QCLの効率を約2倍に高める深い井戸

従来式の量子カスケードレーザ(QCL)のコアは固定された組成の半導体量子井戸と障壁から構成されている。残念ながら、4.5~5.5μm の中赤外(MIR)発光QCL デバイスの場合、この構成はキャリア漏れを引き起こす。このキャリア漏れはデバイスコアの30~40の各活性領域における上部レーザ発振準位と出口障壁トップとの間のエネルギー差(約200meV)が小さいことによるもので、これが温度上昇に伴うスロープ効率の急激な低下と閾値電流密度の急激な増加として現われる。埋め込みへテロ構造をもつデバイスは室温で12%の前面ファセット・ウォールプラグ効率(WPE)を有するが、このデバイスは温度に非常に敏感なため28%の理論WPE値の達成は不可能に近い。
 キャリア漏れを抑制するために提案された多数の障壁と量子井戸構造の代替設計は不成功に終わったが、米ウィスコンシン大学マデイソン校(UWM)と米海軍研究所(NRL)の研究チームはついに効果的な方法の開発に成功した(1)、(2)。深いエネルギー贔子井戸と高い障壁の利用、ならびに緩和と注入領域の慎重な設計によって、このレーザの活性領域からのキャリア漏れは大幅に抑制され、温度によるスロープ効率と閾値電流の変動率も従来のQCLに比して半分になった。言い換えれば、連続波(CW)動作における効率が大いに改善され、最終的に長期(1000 時間以上)にわたる信頼できるワット出カレベルCW QCLが現実のものになった。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2010/06/201006-4wn4.pdf