シングルショット技術で測定する数サイクルパルスのCEP

数サイクルパルスの研究者たちは耳を貸してほしい。間もなくこの分野の実験は、キャリアエンベロープ位相(CEP) とパルス幅のオンザフライ、シングルショット測定によって恩恵を受けることになりそうだ。
 CEPは時間軸上のパルスエンベロープピークと電界ピーク間の遅延の尺度である。多数パルスでは、包絡線内に十分なサイクル数が存在するため、実験結果への位相遅れの効果は無視できる。しかし、高調波発生やアト秒科学のような数サイクルパルスを扱う場合には、CEPは重要な尺度である。
 数サイクルパルスでのCEPはこれまでにも測定されたが、数百あるいは数千を越えるショットの平均化にすぎなかった。しかし、独マックス・プランク量子光学研究所(MPI) の研究グループは、イエナ、ミュンヘン、テキサスなどの仲間と協力して、シングルショットでCEPを測定する方法を完成した。この方法は、数サイクルパルスがガスセルを通過する際に起きる超閾値イオン化(ATI) に依拠している。このATIは、電界に強く依存する過程であり、ATIによる光電子放出は瞬間的な電界の方向で起きる。
 このATI放出は、2001年にゲルハルト・パウルス氏によってCEPの平均測定に初めて利用され、次いで、MPIとイタリア国立物質物理研究所の研究チームによっても使われた(1) 。しかし、CEPの瞬間的な情報を必要とするアプリケーションにおいては、このような平均化測定では不十分であり、最近の研究では、実時間のワンショット測定にするため、2001 年方式に基づいて進められている。
 この研究グループは4.1fs、400μJのレーザパルス出力の10%を分割し、それをキセノンガスセルが設置されている差動真空排気されたドリフトチューブに集光させた。人射ビームの左側と右側に向けて、2個のスリットによってキセノンから脱離したATI光電子を対向する飛行時間型スペクトロメータへと突進させ、マルチチャネルプレート検出器で電子の到着時刻を検出した。迷走磁場を避けるために、機器はミューメタル(磁気遮蔽用ニッケル合金)製のドリフトチューブ内に設置した。MPIのエイドリアン・カバリエリ氏(この研究の共同研究者)は、「左と右に放出された高エネルギー光電子の分布を厳密に比較することで、われわれはパルスエンベロープ最大に対する電界最大の位置を決定することができた。このパラメータは電界の発展を支配する情報を含んでいる」と説明する。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2009/08/200908_wn01.pdf