3Dプリンティング市場展望

Industrial Laser Solutions Japan編集部

日本では、「カーボンニュートラル」「グリーン成長戦略」などに向けた取り組みが議論されている。これに警告を発している代表株は、日本自動車工業会の豊田章男会長だ。3月に行われた記者会見で同氏は、「今のまま2050年にカーボンニュートラルが実施されると、国内で自動車は生産できなくなる」と指摘している。自動車だけでなく鉄鋼など電力コストが重荷になる業種は、先行き国内生産を縮小して、海外投資を増やすことが予想される。

今後、日本脱出に舵を切る製造業は増えそうだが、それでも国内に残る、あるいは残らざるを得ない製造業はどうするか。生産コストを可能な限り圧縮して収益を上げる道を探る必要がある。その1 つの方途が、3D プリンティング(積層造形)である。調査会社のレポートでは、COVID-19パンデミック後の3Dプリンティング市場は、投資が増え、急成長すると予測している。 
以下では、主に米国のグランドビューリサーチ社(Grand View Research)のレポートを見ていくが、予測数字と市場規模に関してマーケッツアンドマーケッツ社(MarketsandMarkets)、フォーチュン・ビジネス・インサイト社(Fortune Business Insights)のレポートも参照している。さらに詳細を知りたい場合は、調査会社のホームページから無償でサンプルを入手することができる。

ほとんどの調査レポートが20%を超える成長予測

各社の市場予測は年平均成長率(CAGR)20%を超える大幅な成長となっている。フォーチュン・ビジネス・インサイト社のレポートは、次のように予測している。 
「世界の3D プリンティング市場規模は、2020年に125億7000万ドルだった。COVID-19 の世界的な影響は前例がなく圧倒的であった。3D プリンティング装置は、パンデミックの中、全地域でマイナスの影響を受けた。 
分析によると、「市場は2017〜2019年の平均年成長と比べて、2020年に20.8%と大きく成長した。2021〜2028年にCAGR 24.0%成長で、2021年に152億6000万ドル、2028年には687億1000万ドルに達する見込みである。CAGR の堅調な上昇は、この市場の需要と成長によるもので、パンデミックが終わるとパンデミック前の水準に戻る」との予測である。 
マーケッツアンドマーケッツ社の予測では、「3Dプリンティング市場は、2026年には348億ドル」に達する。同社のレポートでは、「世界の3Dプリンティング市場規模は、2021年の126億ドルからCAGR 22.5%で成長して、2026年に348億ドルに達する見込み」である。 
グランドビューリサーチ社の「3Dプリンティング、シェア&トレンド分析」では、「世界の3D プリンティング市場規模は、2020年には137億8000万ドル、2021〜2028年にCAGR 21.0%成長する。世界的に2020年に210万台の3Dプリンターが出荷され、出荷数は2028 年に1530 万台に達する見込みである。3D プリンティング(3DP)における積極的なR&D、さまざまな産業からアプリケーションのプロトタイピング要求(特にヘルスケア、自動車、航空宇宙と防衛)が、市場の成長を後押しすると見られている。3DPの産業アプリケーションは、積層造形(AM)と呼ばれている。AMはソフトウエアと3Dプリンターを利用して、材料を層ごとに加えて3次元ファイルと言われる物体を形成する。関連する3DP技術は、そのプロセスを実行するために利用できる一連の技術から選択される。最新のステップは、必要性に基づいてさまざまな業種で、このプセスの導入に関与している」とレポートしている。 現状の市場認識について各社ほぼ一致しているが、予測期間に差があるためCAGR は同じではない。しかしながら、20%を超える高成長を各社とも見込んでいる。 
以下、成長要因、技術、ソフトウエア、アプリケーション、業種、材料、地域市場などを見ていくが、各社の認識に大差ないので、グランドビューリサーチ社のレポートを紹介するにとどめる。

プリンタータイプ

産業用プリンターセグメントが市場を牽引しており、世界の収益シェアは2020 年に76%を超えた。プリンタータイプをベースにし、さらに産業とデスクトップ3D プリンターに分けられている。デスクトップと産業3D プリンターセグメントの両方は、さらにハードウエア、ソフトウエア、サービスに分けられている。 
産業用プリンターは、自動車、エレクトロニクス、航空宇宙と防衛、及びヘルスケアなどの産業で広範に採用されており、高いシェアを占めている。プロトタイピング、設計、ツーリング(工作機械)が、これらの産業業種で最も一般的な産業アプリケーションの一部をなしている。従って産業用プリンターセグメントは、引き続き優位に展開する。 
一方、デスクトップ3D プリンターの採用は、当初、趣味や小企業に限定されていた。しかし今日では、家庭用にもますます利用されるようになっている。教育分野、学校、教育施設、大学なども技術訓練や研究目的でデスクトッププリンターを導入しつつある。 
小企業は特にデスクトッププリンターを採用し、事業を多様化して3Dプリンティング及び他の関連サービスを提供している。例えば、「ファブショップ」というコンセプトが米国では人気を博している。これらファブショップは、顧客が持ち込む設計や要件に従い、部品やコンポーネントのオンデマンド3D プリンティングを提供している。従って、デスクトッププリンターの需要は予測期間に著しく増加すると見られている。

技術展望

ステレオリソグラフィセグメントが市場をリードし、2020 年グローバル収益の10%超を占めた。技術ベースでは、分類は、ステレオリソグラフィ、熱溶解積層法(FDM)、直接金属レーザ焼結法(DMLS)、選択的レーザ焼結法(SLS)、インクジェット、ポリジェット、レーザ金属堆積法(LMD)、電子ビーム溶解法(EBM)、デジタル光加工法(DLP)、薄膜積層法(LOM)などに分けられている。 
現在、ステレオリソグラフィ技術が最大シェアを維持している。それが、最も歴史がある従来型プリンティング技術だからである。ステレオリソグラフィセグメントは、積層造形工程に採用されている他の技術と比較して、2020年にシェア約11%だった。 
ステレオリソグラフィ技術に関連する優位性や運用容易性が、この技術の採用を促進しているが、産業専門技術者や研究者による技術の進歩や積極的R&D活動が、他の効率的で信頼度の高い技術にチャンスを与えている。 
FDMも、かなりの収益シェアを占めている。さまざまな3DPプロセスで同技術が広範に採用されているためである。DLP、EBM、インクジェット、DMLSも予測期間に採用が増加すると見られている。これらの技術が特殊積層造形工程に適用できるからである。航空宇宙&防衛、ヘルスケア及び自動車産業からの需要の伸びが、これら技術の採用に機会を開くと見られている。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/10/032-034_market_3d_printing.pdf