同軸ワイヤを使用した高出力のレーザ指向性エネルギー堆積:最新情報
レーザワイヤ指向性エネルギー堆積は、堆積速度が高く、フィードストックコストが低いことから、競争の場に参入し始めている。
積層造形技術が次々に登場し、目覚ましいペースで成長し続ける中、米EWI社は、十分な開発が行われておらず、解決は困難であるものの、関心が高まっている分野を特定した。それは、今日の金属積層造形における一般的なサイズよりもはるかに大きな構造を造形する、高堆積速度の金属積層造形である。
EWI 社は、「ブローンパウダー」(粉末供給式)のレーザ溶接、ワイヤ供給式の電子ビーム溶接、ガス金属アーク溶接の積層造形手法を使用して、大型造形物を製作した初期の経験から、複数の課題と機会を明確に特定した。そこで2年近く前に、大型造形物の積層造形を目的とした、高出力で高堆積速度のレーザソリューションの調査と開発を行う社内R&D活動に、出資することを決めた。本稿は、1年前の報告書(http://bit.ly/CoaxialAdditive2020)の続編で、未だ進化中のこの重要な積層造形技術に関する、新しい情報と知見を追加するとともに、残る課題を洗い出すものである。
数多くの形態の積層造形が、設計者やメーカーだけでなく、熱心なマニアまでをも魅了し続けている。ポリマーから砂や金属などに至るまでの幅広い材料を使用する、多数の積層造形技術が存在する。金属積層造形の中では、レーザ粉末床溶融結合法(Laser PowderBed Fusion:LPBF)が最も高い関心を集めており、LPBF システムは、他のどの種類の金属積層造形システムよりも多く製造されている。「CADtopart」(CADから部品)というその製造コンセプトの魅力と、明らかなシンプルさは、どれだけ誇張してもし過ぎることはない。
LPBF は、まだ多くの重要な細部がこれから固まっていく段階にあるが、それが他の積層造形ソリューションに与えてきた全般的な刺激は、かなり大きい。最も大きな点は、より堆積速度の高い金属積層造形に対する需要の高まりによって、従来のアーク溶接、電子ビーム、レーザの各手法によって金属融合を行う、指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition:DED)ソリューションに対する関心が高まっていることである。レーザDED は、さらに2 つのカテゴリーに分類できる。すなわち、レーザ粉体肉盛法(LaserMetal Deposition:LMD)(「ブローンパウダー」DED としても知られる)と、ワイヤベースで金属を供給する方法で、後者は、あらゆる手法の中で最も開発が進んでいない。
ワイヤを使う理由とその溶融方法
積層造形が登場するはるか前に、アーク放電に基づくプロセスを熱源として使用する、金属クラッディング(肉盛り)方法があった。1925年に特許化された最初のガス金属アーク溶接(GasMetal Arc Welding:GMAW)の積層造形プロセス(米国特許番号:1,533,300)は、「装飾的及び実用的な性質を持つ多様な物品」を作成するためのものだった。当時は「積層造形」とは呼ばれていなかったが、それは確かに今日の定義に当てはまるものである。それだけ早くに誕生したGMAWDED プロセスだったが、これまでは主に、修復、腐食保護、耐摩耗性表面の作成に使われてきた。GMAW DEDは現在、積層造形の分野に回帰しており、レーザ粉末DEDは、造形物全体の製作に適用されている。後者のDEDソリューションは、最終的な精密加工部品寸法を達成するためのミリング(フライス加工)やターニング(旋盤加工)機能を含む工作機械に組み込まれている。ではなぜDED 積層造形において、ワイヤへの関心が高まっているのだろうか。
何よりもまず、あらゆる形態の積層造形が高い関心を集め、広く受け入れられていることがある。目新しいだけで大型造形物に対して検討する価値はなしとして、積層造形をかつては却下していた業界が、はるかに高い関心を持ってこの技術に着目している。航空宇宙、輸送、金属成形、海軍などの分野で、大型部品のレーザ積層造形に対する関心が高まっており、金属原料として粉末とワイヤのどちらを選択するかは、以下の理由に基づき、極めて明白である。
- ワイヤは粉末よりも、重量あたりのコストにおいてはるかに経済的である
- ワイヤは粉末よりも、利用効率がはるかに高い
- ワイヤDEDは粉末堆積と比べて、「飛び散り」がはるかに少ない
- ワイヤには、爆発や呼吸器系に関する問題がない
その一方で、ワイヤにも次のような欠点がある。
- ワイヤはレーザを熱源とする場合に、粉末よりも加熱/溶融が難しい
- ワイヤの供給と直線性(ワイヤがまっすぐに供給されないこと)が問題になる可能性がある
- ワイヤ表面の放射率の幅広いばらつきによって、プロセス開発がより困難になる
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/10/010-012_ilsft_additive_manufacturing.pdf