小型EUVシステムによるナノ構造の作製

セルヒー・ダニリュク
サッシャ・ブローゼ
アンドレアス・ソス

小さなEUV光源と比較的シンプルなプロセス技術によって、最小で28nmまでの周期的な構造を作製することができる。

2020年11月に発売された新型iPhoneには、極端紫外線(extreme ultra violet:EUV)という波長13.5nmの光を用いて製造された、特殊なプロセッサが搭載されている(図1)。EUVリソグラフィの研究は数十年前から続けられており、現在は装置を1億ユーロ超の価格で、蘭ASML社から購入することができる。売上高が数十億ユーロにものぼるスマートフォンであれば、その投資は回収できる可能性が高い。 
しかし、EUV部品の評価を行う人や、表面にナノ構造を作製したいだけの人は、それよりも小型のソリューションを求める可能性がある。フラウンホーファーレーザー技術研究所(Fraunhofer Institute for Laser Technology:Fraunhofer ILT)とアーヘン工科大(RWTH Aachen University)の科学者らは(どちらの施設もドイツのアーヘンに所在)、独自のEUV光源と比較的シンプルなプロセス技術を使用して、周期的なナノ構造を作製する技術を開発した。 
このチームは、包括的な開発アプローチを採用した。「私たちにとって重要なのは、プロセスチェーン全体を提供できるようにすることだ。シミュレーションからマスク製作、作製した層やナノ構造の品質管理に至るまでのすべてのプロセスを、独自に構築したのはそのためである」と、フラウンホーファーILTのプロジェクトマネージャーを務めるセルヒー・ダニリュク氏(Serhiy Danylyuk)は述べた。そうすることで、このハイエンドな技術を、これに関心を持つ中規模企業や新興企業にも、理にかなった投資費用で提供することができる。

図1 フラウンホーファーILT のパルスEUV 光源は、波長13.5nm、帯域幅± 1% で、40W の出力を備える。(提供:フラウンホーファーILT)

図1 フラウンホーファーILTのパルスEUV光源は、波長13.5nm、帯域幅± 1%で、40Wの出力を備える。(提供:フラウンホーファーILT)

近接場干渉

この手法の技術的背景は、アクロマティックなタルボット(Talbot)効果など、コヒーレント照射の干渉効果に基づいている。近接場(マスクの裏から500μm以内)では、強度分布が生成され、それによって微細リソグラフィ構造が作製できる。この原理は、比較的広帯域の放射にも適用できる。 
シミュレーションとラボテストにおいて、フラウンホーファーILTは、このプロセスを波長13.5nm のEUV照射に合わせて最適化した。50μm の距離における焦点深度は約15μm で、これは、数百nmの層の処理に十分な値である。このプロセスは、周期的なラインと穴の両方の構造に適用できる。穴は円でも三角形でもよく、原理上は、構造の形状に制約はほぼ存在しない。イメージング処理において、透過マスクは2度拡大されて、ウエハに投影される。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/10/026-027_tr_manufacturing_technology.pdf