商用化されている超短パルスレーザ技術:パート2-光学部品、システム、契約製造

ロナルド・D・シェーファー

超短パルスレーザの光学部品メーカー、システムメーカー、米国の契約製造業者について解説する。

本稿では、USP加工のレーザ以外の要素を取り上げる。特に、光学部品とビームデリバリシステム(BDS)は、ビームを対象物まで伝送し、その間のビームの成形と調整を行い、オペレータの安全を確保する。適切な光学部品とビームデリバリがなければ、レーザはただの「電球」となってしまうため、これはUSPレーザ加工の重要な要素である。 
しかし、光学部品以外にも、システム統合には、モーション、ビジョン、ロボット、ソフトウエア、安全性など、他にも数多くの検討事項がある。USPレーザによる高精度加工では、そうしたすべての要素のハイエンドな統合も必要になる。ほんの数年前まで、多くの確立されたシステムインテグレータがUSPレーザシステムを構築したいと思わないか、構築した経験を持っていなかった。現在では、汎用的な用途または非常に特化した用途に向けて、レーザを統合する企業が多数存在する。最後に、レーザシステムを実際に使用することが、技術の推進と新規用途の開拓に不可欠である。そうした状況を包括的にとらえるために、USPレーザ加工サービスを提供する複数の米国契約製造業者についても解説する。

光学部品

USPレーザのみを対象としているか、少なくともUSPレーザ市場を自社事業の大きな要素としてとらえている光学部品メーカーはほとんど存在しない。多くの「標準的な」光学部品メーカーがこの市場に従事していると主張しているが、そうした企業のウェブサイトにその事例を示す記載はなかった。要件が特に厳しい用途でなければ、「標準的な」光学部品で200fs以上のパルス幅に対応できるため(パルス幅が非常に短い場合は、光の広帯域特性の考察が必要になる)、マーケティング担当者はそれをUSP事業に従事している証拠と見なすのだろうと思う。本稿に示すのは、最近のカンファレンス/展示会または出版物で、この市場に従事していることを宣伝していた企業で、表の11の企業のうちの7社が筆者のアンケートに回答してくれた。USPレーザに特化した光学部品のほとんどが、ビームを非常に高速に動かすことによってレーザの利用可能な繰り返し周波数を上げるか、ビームを分割することによってより効率的に高いパルスエネルギーを使用するかのいずれかの方法を採用している。 
表1は、USPレーザ用の光学部品を供給する代表的なメーカーを示したものである。この表からわかるように、USPレーザを事業の主要要素とするビジネスモデルを有する企業は存在しないが、表に掲載されているすべての企業が、この分野に良好な成長機会があると考えている。パートIのレーザのセクションと同様に、この表とそれ以降の表からいくつかの企業を取り上げて、詳しく解説していく。いくつかの企業は、複数の表に掲載されている。 
光学部品の分野において、独リモ社(LIMO)は、効率の高いウエハベースの製造技術を有することから、ガラスシリンダーレンズの世界的な主要サプライヤーの1社である。同社は、あらゆるダイオードタイプと出力クラスを網羅する、高精度光学部品を専門としている。最大300mmのウエハサイズによって、ハイグレードガラスやクリスタルから数万枚ものレンズを、単一ステップの工程で、一貫した高い品質で製造することができる。同社は、ハイエンドな用途向けのカスタム光学部品を製造しており、USPレーザ用のマルチチャンネルビームデリバリシステムの開発に主に関心を寄せている。 
独フォトニック・ツールズ社(Photonic Tools)は、物理学者、エンジニア、そして、レーザとビームデリバリの分野に携わり、これまでに企業を創設して運営してきた経験を持つ経営者で構成されている。同社は、市場と技術の課題を理解し、USPレーザ用のカスタム製品を提供している。同社の主力製品は超高速光ファイバケーブルだが、一連の新製品を開発中である。USP市場は、同社の今後の計画における主要な要素である。 
独スキャンラボ社(Scanlab)は、約20年前に創業した企業で、現在は高速ビームモーションにおいて世界的に卓越した地位を確立している。幅広い波長、パルス幅、及び出力を網羅するスキャニングソリューションを提供している。同社のベルギーを拠点とするネクスト・スキャン・テクノロジー部門(NextScan Technology)は、USPレーザ用の高速ポリゴンスキャニングに主に注力している。実際、ポリゴンスキャナとガルバノスキャナの両方を搭載する統合パッケージが、標準製品またはカスタム製品として購入可能だ。標準的なガルバノスキャナは2Dと3Dで提供されている。実は、表に掲載されている独レイレーズ社(Raylase)も、同社と同じ母体の傘下にある。ただし両社は基本的に、それぞれ独立して運営されている。一般的に、ガルバノスキャナは、標準構成で100~150rad/s、カスタム構成で数百kHzに相当する1000~4000rad/sのビーム操作が可能である。ポリゴンスキャナのビーム操作は一般的に100ns程度で、約1 ~3MHzに相当する。ハイブリッド構成によって利用可能な繰り返し周波数を、最大10MHzまで引き上げることができる。

表1 2019年USP光学部品メーカー

表1 2019年USP光学部品メーカー

システム

表2は、USPシステムインテグレータ約20社のリストである。ほとんどが国際的なビジネスモデルを運用しつつ、米国でも事業を展開している。このうち12社がアンケートに回答してくれた。独3Dマイクロマック社(3D Micromac)、米フォトマシーニング社(Photo Machining)、蘭フォトンエナジー社(Photon Energy)など、ほぼすべての用途を網羅するUSPレーザシステムを取り扱っているが、レーザを製造していない企業も含まれている。レーザは、パートIに示したレーザメーカーから購入している。システムメーカーがどのレーザを選択するかは、レーザベンダーとの関係、コスト、性能、サポートなど、多数の要因に依存するが、おそらく最も重要なコンポーネントはレーザであり、それに基づいてアプリケーションが開発される。エンドユーザーは、製造する装置に可能であれば既知のレーザを搭載してリスクを最小限に抑えたいと考える。

表2 2019 年USP システムインテグレータ

表2 2019年USPシステムインテグレータ

(もっと読む場合は出典元PDFへ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2021/08/006-012_tr_ultra-short_part2.pdf