レーザ熱処理による、自動車用金型製造の品質向上

アラヴィンド・ジョナラガダ
マーカス・スタックプール
マシュー・スタックプール

レーザ手法は、OEMメーカーのコスト削減にも効果

全く同じ自動車用金型で比較した場合、欧州中の自動車用金型OEMメーカーが米国のOEMメーカーよりも迅速に、品質が高くコストの低い金型を提供する。その理由は、レーザ熱処理(図1)にある。欧州ではほぼ主流になっているこの処理が、米国ではまだほとんど導入されていない。 
欧州におけるレーザ熱処理の導入は、広く成功を収めており、この技術が米国のOEMメーカーによって採用されることは間違いない。米国の自動車用金型OEMメーカーによる熱処理の導入を妨げる要因としては、この技術が米国においてまだ十分に理解されていないこと、レーザ熱処理によるコスト削減、品質、スケジュールの改善効果に関するデータが米国の意思決定者らにまだ伝達されていないこと、レーザ熱処理を行う信頼できるジョブショップが少ないことが挙げられる。しかし、レーザ熱処理は確実に、米国のOEMメーカーの間で急速に普及すると考えられる。 
本稿では、レーザ熱処理の基本的な技術について説明し、応用事例で得られた、自動車用トリム/フォーム金型におけるコスト削減効果を紹介する。

図1 自動車用フロントガード側スタンピング金型のレーザ熱処理を実際に行っている様子。

図1 自動車用フロントガード側スタンピング金型のレーザ熱処理を実際に行っている様子。

レーザ熱処理とは

レーザ熱処理とは、金属部品の表面に熱を与える目的で、0.5×0.5~2×2インチ(約1.3×1.3~5.1×5.1cm)の標準スポットサイズで、レーザビームを照射する処理である。金属表面と熱影響部(Heat Affected Zone:HAZ)が、金属の性質が変化する以上の温度になるように、レーザエネルギーを印加する。レーザ熱源が取り除かれると、金属の熱質量によって加熱領域が急速に冷却されるため、所望の硬度が得られる。レーザビームの作用はきめ細かく調整できるため、硬化過程のすべての側面を正確に制御することが可能である。形状によっては、他の手段では到達が難しい領域に対しても、見通し線を通してレーザ熱処理を適用することができる。レーザ熱処理は、レーザ硬化と呼ばれる場合もある。

レーザ熱処理のメリット

高周波焼入れ、加熱炉、炎焼入れなどの従来の熱処理手法と比べた場合の、レーザ熱処理のメリットは以下のとおり。 
一貫した硬度深さ:レーザエネルギーの性質を利用して、ミリ秒レベルのフィードバック制御など、金属そのものへのエネルギー供給を正確に制御することにより、レーザ熱処理は指定されたとおりにHAZ が生成可能で、一貫した硬度深さを非常に小さな許容誤差で達成することができる。

(もっと読む場合は出典元PDFへ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2020/07/032_ar_laser_heat_treatment.pdf