高輝度ファイバレーザが導く、リモートレーザ加工の進歩

リン・シーハン
ダーブA. V. クライナー
マイケル・アチュリー

高強度ビームによる、熱伝導率の高い金属の切断と溶接

卓越したビーム品質を備える高出力ファイバレーザが登場したことで、リモートレーザ走査(RLS:Remote LaserScanning)の分野は急速な進歩を遂げた。他の技術と比べてRLSは、さまざまな対象物を加工する際の柔軟性が高く、処理速度が速く、サイクルタイムが短い。 
本稿では、高輝度(ビームパラメータ積[BPP:Beam Parameter Product]が1.5mm-mrad未満)のファイバレーザで、リモートレーザ加工のための主要な性能上のメリットが得られることについて解説する。高輝度光源はその光学的特性により、加工対象物からのスタンドオフ距離を長くとることができ、システムインテグレーターはそれを活用して、光学部品をより安全な状態で動作させることができる。高い強度(小さなスポット径)と、高速ビームポジショニングを達成するその能力を利用して、アルミニウムや銅といった熱伝導率の高い金属と、新しい軽量炭素繊維複合材料の切断、アブレーション、溶接を実際に行った結果を紹介する。

高輝度ファイバレーザ

次世代ファイバレーザ「nLIGHTalta」は、スタンドアローンのポンプモジュールにポンプダイオードとドライバを収容し、4kWを超える出力を生成できる構成可能なゲインモジュールにゲインファイバを収容する、新しいアーキテクチュア(1)を採用する。ゲインモジュールは、高輝度出力を可能にする新しい主発振器 / 出力増幅器(MOPA:Master Oscillator/Power Amplifier)設計をベースとしている(図1)。従来のファイバレーザは、多数のレーザの出力を結合するファイバコンバイナ技術を採用し、そのために本質的に輝度が低下するが、この設計は、それとは異なる。このレーザには、堅牢な集積型バックリフレクション(反射戻り光)アイソレータも搭載されており、それによってすべてのモジュールが加工対象物によって生成される反射戻り光から保護され、高反射性材料の加工を中断することなく安定して行うことができる。この2つの進歩がRLSにもたらすメリットを紹介する。 
システム設計におけるRLSの主要な項目は、スキャナのスタンドオフ距離、加工箇所におけるスポット径、そして走査範囲である。高輝度ファイバレーザを使用することのメリットの1つは、スタンドオフ距離と走査範囲を大きくとりつつ、スポット径を小さくして溶接速度を速く、溶接浸透度を深くできることである。高輝度(ファイバコアサイズ:50μm)のメリットを示すものとして、商用提供されている2種類のRLSスキャナ製品(独スキャンラボ社[SCANLAB] の「IntelliWELD 」と「IntelliSCAN」)の例を表に示した。この例から、14%小さいスポット径を維持しつつ、スタンドオフ距離は50%以上大きくできることが見てとれる。nLIGHTレーザは、最大4kWの出力で高輝度性能を提供する。

図1 次世代ファイバレーザ「nLIGHT alta 」(a)と、その高輝度性能の例(b)。

図1 次世代ファイバレーザ「nLIGHT alta」(a)と、その高輝度性能の例(b)。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/09/tr_p28.pdf