宇宙とレースの分野に革命をもたらす付加加工

フランチェスカ・クォギ

部品交換の可能性を簡素化する技術

2008年創業の米CRP USA社は、戦略的な構想の下、ノースカロライナ州のNASCAR 関連地区の中心に拠点を構え、付加加工(AM:Additive Manufacturing)と3Dプリントの分野を専門としている。同社は、レーシングチーム向けに車載部品や風洞部品を製造しているが、その専門技術を活用して新たな高みにも挑戦しており、Windform付加加工(図1)によって、宇宙(人工衛星やCubeSat の構造物)、エンターテインメント、自動車業界向けの部品を製造している。Windform 材料にレーザ焼結技術を適用することで、非常に機能性が高く、美しく仕上げられ、信頼性が実証された部品を製造することができる。 
同社のオペレーション担当ディレクターを務めるスチュワート・デイヴィス氏(Stewart Davis)は付加加工に20年間従事しており、同社は、Windform材料を用いた選択的レーザ焼結(SLS:Selective Laser Sintering)の専門技術を保有している。この技術は、イタリアのCRPグループ(CRP Group)傘下のCRPテクノロジー社(CRP Technology)によって1990年代終わりに開発されたものである。 
CRP USA社は複数の業界を対象に、各種企業のニーズと問題に対応するソリューションを提供している。「顧客の課題がわれわれ自身の課題になる。それが当社のモットーであり、使命である。われわれは、これまで追求できなかった応用を可能にする。それができるのは、付加加工の状況に変化をもたらした当社のWindform材料のおかげである」とデイヴィス氏は述べている。

図1 Windform付加加工プロセスにより、非常に機能性が高く、美しく仕上げられ、信頼性が 実証された部品が製造される。

図1 Windform付加加工プロセスにより、非常に機能性が高く、美しく仕上げられ、信頼性が実証された部品が製造される。

小型衛星の製造

同社は、米ケンタッキー宇宙センター(Kentucky Space Center)向けの付加加工にWindform材料を使用し、小型衛星CubeSatを製造した。このCubeSat は軌道への打ち上げに成功している(図2)。CRP USA社は、ケンタッキー宇宙センター、米ケンタッキー大( University of Kentucky)、米モアヘッド州立大(Morehead State University)とともに「KySat-2」プロジェクトを遂行した。CubeSat KySat-2は2013年11月、NASA ElaNa IVミッションの一環として、バージニア州のワロップス飛行施設(Wallops FlightFacility)から軌道に打ち上げられた。 
KySat-2には、SLSとWindform材料を使用して製造された複数の3Dプリント部品が搭載されている。付加加工プロセスでは、カメラシステムを取り付けるためのハードウエア、分離スイッチ用のエクステンション、アンテナを収納された状態で保持するためのクリップ、オンボードバッテリ用の取り付けブラケットの3Dプリントが行われた。KySat-2に対して適切な部品を製造するために、プロセスと材料が非常に重要だった。使用された材料は、最大限の硬度とロバスト性を兼ね備えつつ、KySat-2ユニットの総重量に影響を与えない、非常に軽量な最終部品を製造できるものである。KySat-2の主なミッションは、衛星に取り組む学生を対象とした教育用ツールやデモとしての役割を果たすことである。設計、構築、試験のすべてが学生とエンジニアによって行われ、サブシステムのほとんどがインハウスで設計された。 
CRP USA 社は、KySat-2の展開可能な太陽光パネルに搭載される、5つのWindform XT 2.0部品を製造した。5つとは、カメラアニュラス(円環部)、レンズカバー、展開可能なエクステンション、アンテナクリップ、バッテリ保持具である。Windform XT 2.0は、3Dプリント部品の機械的性能を最大限に高める、炭素繊維が充填された高性能材料である。SLS とWindformXT 2.0材料を採用することで、従来技術で製造された部品と簡単に交換可能な、少量生産の最終部品が製造できるほか、これまでは製造できなかった部品を製造することもできる。

図2 ケンタッキー宇宙センターは、 Windform 3D プリントを使用して CubeSat 小型衛星を製造した(資料提 供:ケンタッキー宇宙センター)

図2 ケンタッキー宇宙センターは、Windform 3Dプリントを使用してCubeSat小型衛星を製造した(資料提 供:ケンタッキー宇宙センター)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/11/ILSJ_Sep16_ar1.pdf