微細加工用レーザの新展開

大野 剛

1961年に世界初の商用レーザメーカーとして米国シリコンバレーに創立したSpectra-Physicsは常に新たな技術開発を行い多くの“世界初”を創出し、半世紀余のレーザの歴史とともに歩んでいる。今日、各種産業用微細加工分野ではレーザは欠かせないツールとなってきている。近年は特にスマートフォンに代表されるモバイル機器の驚異的な需要増加に伴い、内蔵されている部品の微細化、軽量化の要求、加えて生産性の向上と生産コストの低減は不可欠のものになっている。これらの製造工程におけるソリューションに代表される産業用レーザ微細加工の裾野はますます拡がりを見せ、今後も大いに期待されている。またSpectra-Physicsでは2011年にオーストリアのHigh Q Laser社を、2014 年にはイスラエルのV-GEN社を傘下に加え、フェムト秒からナノ秒、固体レーザからファイバレーザに至る製品群を充実させ微細加工への新たなソリューションを提供することを可能としている。

微細加工用途レーザにおける選定上のパラメーター

微細加工用途のレーザの選定においては、加工物の材質、厚み、要求加工品質、加工形状、加工スピードなど目的に応じて最適なパラメーターのレーザの選定が必要となる。主なパラメーターとしては、波長、出力(パルスエネルギー)、パルス幅(ピークエネルギー)、繰返しなどが挙げられる。最近では、材料物性の全く異なる物質の積層物質、特殊な化学処理がなされた物質、光の吸収の少ない透明物質などへ高度な加工品質に加えて加工スピードを要求される微細加工が増加し、最適なレーザの選定も難しくなりつつある。

ファイバレーザ VGENシリーズ

2014年にSpectra-Physics 傘下に入ったVGEN シリーズファイバレーザは主にMOPA方式パルスファイバレーザ( IR 及びグリーン)、Q- スイッチパルスファイバレーザ、CWファイバレーザを軸に平均出力100W程度までの各種ファイバレーザをラインアップしている。 
微細加工をターゲットに、従来ファイバレーザでは難しいとされていた優れたビームプロファイル( M2<1.3)を実現、特にMOPA方式ファイバレーザでは1ns~300nsまでのパルス幅の可変、 繰り返し最大1000kHz程度までの可変対応が可能となっている。また、任意cのタイミングでパルスを取り出せるPOD(Pulse On Demand)機能を搭載したモデルも今年リリースした。1nsのショートパルス、高ピークパワー(40kW)による熱影響の少ない加工を実現することが可能となった。主なアプリケーションとしては、各種マーキング(微細マーキング、ブラックマーキング、カラーマーキング)、各種微細加工(FPD、太陽電池、PCB など)、その他各種微細加工が可能である。グリーンパルスファイバレーザもMOPA方式を採用しグリーンが必要な微細加工への対応が可能である。

図1 MOPA 方式パルスファイバレーザ VGEN-ISP外観

図1 MOPA方式パルスファイバレーザ VGEN-ISP外観

図2 POD 特長を 生かしたラスターマ ーキング例

図2 POD 特長を生かしたラスターマ ーキング例

高繰り返し産業用フェムト秒、ピコ秒レーザ Spirit

Spiritシリーズは、フェムト秒またはピコ秒で出力する産業用高繰り返しレーザである。 フェムト秒バージョンにおいては400fsec以下のパルス幅を持ち最大平均出力は16Wとなっている。Spiritの産業用途への納入実績は増加しており、超短パルスレーザを用いた極めて熱影響の少ない微細加工をはじめとして、医療分野への応用も浸透しつつある。 
また、2015年には透明・脆弱性素材の微細加工用に最適化された産業用フェムト秒レーザ Sprit CS を新たにリリースした。Spirit CSは、特許出願中のClearShapeレーザプロセス工法を用い、化学強化ガラス、非強化ガラス、サファイアなどの材料を極めて優れた切断品質で、曲線形状を含む高速切断を実現する。切断速度は数メートル毎秒、切断面品質は他のレーザ加工法に比べ数倍優れ、切断面粗さは<0.1umを可能にし、化学強化ガラスにおいては切断後たわみ強度700MPaを実現可能とした。

(もっと読む場合は出典元PDFへ)
出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/ILSJ150919-21-1.pdf